日本人拉致問題について「解決済み」だと繰り返してきた北朝鮮が、さらにその態度を硬化させている。朝鮮労働党機関紙の労働新聞は2018年7月17日付の紙面に掲載した署名入りの論説記事で、「歴史の裏道に消えた『拉致問題』」などと表現した。
豊臣秀吉による2度の朝鮮出兵まで例に挙げながら、日本は「前代未聞の拉致国家」だとして、謝罪と賠償という形で過去の問題を「一刻も早く清算しなければならない」と、従来どおりの主張を展開。日朝首脳会談を実現して拉致問題の解決を目指す日本側との温度差が際立つ形になっている。
拉致問題は「私たちの誠意と努力によって、すでに解決された問題である」
論説記事は、肩書不明の「リ・チョルヒョク」を名乗る人物の署名入りで、拉致問題は
「私たちの誠意と努力によって、すでに解決された問題である。これは、世界がすべて知っている事実である」
として、「歴史の裏道に消えた『拉致問題』」という表現を使いながら独自に主張を展開した。
「日本が歴史の裏道に消えた『拉致問題』をしつこく持ち出して固執する目的は、あまりにも明らかだ。それは、『拉致問題』を世論化して、被害者になろうというものである。そうすることで、『拉致問題』を過去の清算を回避する盾にし、対(北)朝鮮敵視政策と再侵略の政治的スローガンに使おうとしている」
その上で、
「歴史的に、日本は計り知れないほど多くの朝鮮人を誘拐、拉致、強制連行して酷使して殺戮した前代未聞の拉致国家である」
として、過去の事例を列挙。
例えば、朝鮮出兵として知られる文禄・慶長の役(1592~93、1597~98)で
「日本の武士たちは数多くの技術者、専門家と罪のない人民を集団的に拉致した」
のに加えて、大韓帝国最後の皇太子、李垠(リ・ウン、1897~1970)が日本に渡ったことを「日本に強制連行された」と表現。徴用工問題や慰安婦問題にも言及し、
「日本は朝鮮民族の前に犯した過去の罪を一刻も早く清算しなければならない」
と結んだ。
日本政府「相互不信という殻を破り、1歩踏み出して解決したい」
そんな中でも日本側は、引き続き拉致問題解決のための日朝首脳会談を模索している。菅義偉官房長官は2018年7月18日午後の記者会見で、北朝鮮の非核化へのスケジュールが固まらないことが拉致問題にどう影響するかを聞かれ、
「拉致問題の解決には大きな決断が必要であって、金(正恩)国務委員長は、米朝首脳会談を実現した指導力があり、政府としては日朝関係でも新たなスタートを切って、拉致問題について、相互不信という殻を破り、1歩踏み出して解決したい、そういう姿勢は変わりない。最後は安倍総理自身が金国務委員長と向き合い、日朝首脳会談を行わなければならず、これを行う以上は、拉致問題の解決に資する会談としなければならない」
と答えている。