米中が貿易「チキンレース」 世界経済への影響は?

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外国為替市場への波及に懸念が強まっている

   なにより、金融市場への波及に懸念が強まっている。特に注目されているのが外国為替市場。このような場合、報復合戦が両国に打撃になるから、リスク回避のため、ドルでも人民元でもない「安全資産」とされる通貨が買われることが多い。英国の欧州連合(EU)離脱決定時などの円高は記憶に新しい。今回も円が買われるとの連想が働くところだが、現実にはドル高が進んでいる。7月第2週の円相場は1ドル=112円台前半と、半年ぶりの円安水準になった。円に限らず、新興国通貨なども軒並み売られて安くなっており、ドル独歩高の様相だ。米国経済が堅調で、制裁・報復合戦でもにわかに影響はないとの見立てだ。もちろん、米連邦準備制度理事会(FRB)が進める利上げもドル高要因だ。

   ここで特に注意を要するのが人民元の動向だ。7月第2週の元相場は1ドル=6.72元まで下落し、3日に付けた直近の安値に迫った。貿易戦争による中国経済の悪化への懸念が根底にあるが、「中国当局が輸出を下支えするために元安を容認している可能性がある」(国際金融筋)との見方もある。中国人民銀行(中央銀行)は預金準備率を0.5ポイント下げて、15.5%にし、景気への配慮を示したが、こうした対応が元安容認との見方の論拠だ。

   ただ、元相場下落が中国からの資金流出の事態にまでいくと深刻だ。2015年夏、中国当局の人民元切り下げ政策をきっかけに世界の株式市場が動揺し、特に中国からの資金流出が起こり、「人民元ショック」と呼ばれた。現在、中国は元安に加え、株安、債券安というミニ・トリプル安の状況で、金融関係者の間では「1ドル=7元が、当局が容認するライン」との見方も聞かれる。これを突破して元安が進むようなら、資金流出が深刻化する可能性もあり、3年前の再来で、世界同時株安といった形で世界経済が再び大混乱に陥る恐れもある。

   米国経済も安泰という保証はない。パウエルFRB議長は今回、7月12日のラジオ番組で「(追加関税によって)インフレ率が上昇し、景気が弱まれば、非常に困難な状況になる」と述べた。関税をかければその分、国内物価が上がり、景気が減速した場合、インフレ率を抑える金融引き締めと、景気刺激のための金融緩和という、相矛盾する政策をどう選択していくか、難しい判断を迫られるということだ。

   米中それぞれ不安をかかえての「チキンレース」の先にどのような世界経済の姿が待っているのか、目が離せない状況が延々と続きそうだ。

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