妙な自粛ムードは経済的な「二次被害」になる可能性も
しかも、与党でも野党でも、もし政治家が会合をしていても、政府や官僚はきちんと動いている。今回の豪雨でも、特別警戒警報は早い段階で出されていた。こうした災害では、必ずしも政治家によるトップダウンは必要でない。政治家は、政府がうまく機能していない場合に重要な決断をする役目であり、官僚のように災害対応の日常業務を行うわけではない。かつての民主党政権のように、電卓を片手にもち政治家が官僚の仕事をして、政治家としてのパフォーマンスをアピールしていたのは滑稽であった。結局、財務省の手の上で、政治的な事業仕分けを行ったために、公共事業費は大幅なカットとなって、必要な予算を付けられず、その後の治水対策で後れをとるはめになった。不味い政治主導の典型である。
政治家に限らず、被災地以外の人は、できるだけ平常の生活を維持する方がいい。被災地への旅行を予定していたのであれば、一時的に延期するのはやむを得ないが、時期をみて延期していた旅行も実施したほうがいい。被災地以外で妙な自粛ムードが広がると、経済的な「二次被害」になる可能性すらある。それは、自然災害を超えた「人災」にもなりうるので、よく注意したほうがいい。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「大手新聞・テレビが報道できない『官僚』の真実」(SB新書)など。