テレビが見られるようになって喜んだ住民が...
「尚」さんから、こんな話があった。テレビがようやく復旧した際の、「近所のおじいさん」のことだ。
最初はとても喜んでいたこの男性は、ニュースを見るうちにすっかり落ち込んでしまったという。どこの局も繰り返し、地元を見舞った水害の「悲惨な映像」を流しているからだ。その効果に一定の理解を示しつつも、こうした報道が「あまりにも私たちの心を折る」と「尚」さんは言う。
決して「大きな町じゃない」真備町で、「昨日まであったもの」が「町単位」でなくなった辛さ。町のこれからへの、見通しの立たなさ。不安を抱える「尚」さんだが、「伝えてほしいこと」を尋ねると、仮設トイレの設置や水道の復旧が進みつつあることに触れ、「あとは私たちが頑張るだけです」として、このように記していた。
「最初に流れた水没した映像に踊らされず、必要以上の同情を持たず、必要以上の義憤に駆られず、町が立ち直った時に、真備町や倉敷市でお金を落としに遊びに来てほしい、ということです。皆さんの善意が必ずしも私たちのためになるわけではないと、心のどこかに留め置いてほしい、ということです」