住民たちが、「招かれざる客」に心を痛めている。
西日本豪雨に見舞われた岡山県倉敷市などで、早くも「野次馬」の姿が見られ始めた。最大の標的は、21人が亡くなった真備町だ。また、「善意」で訪れた人々が、かえって救助・復旧を妨げる場面も。地元からは悲鳴が上がっている。
家を覗きこんだり、写真を撮ったり
「雨の方が落ち着き、排水が進んだと報じられたこともあって、『被害はどんなものか』と見に来られる方が増えたようです。もちろん、親類の方などを心配してこられた方も多かったのですが、明らかにそうではない、という人が目立つということで......」
2018年7月9日、J-CASTニュースの取材にこう話したのは、倉敷市の広報担当者だ。市では公式ツイッターで9日朝、以下のように呼びかけていた。
「現在、外部から真備地区の被災地域には近づかないでください。決壊箇所などを見に来られていますが、工事や救助の妨げになります。真備地区の被災地域には近づかないでください」
実際、地元からも、早くも「野次馬」が出没しているという証言が相次いでいる。ただでさえ交通状況が悪化している中、こうした野次馬が「渋滞」の一因にもなっているようだ。
J-CASTニュースが話を聞いたある地元住民は、隣町の総社市から、野次馬らしき車が真備方面に押しかけ、道路が渋滞状態になっているのを見かけたという。現場は狭い道だ。消防関係者などが交通整理をする時間帯もあったが、常に張り付いているわけにもいかない。
「一方向しか通れないのでパトカーなどがなかなか通れないところを見ました。今日(9日)もそういう方がいるようです」
地元は神経質になっている。この住民の祖父も、水が引いて家に戻ることができるまで「盗難の心配はずっとしていました」。そんな状況で、被災した家を覗きこんだり、写真を撮ったりする来訪者に、地元は「嫌な思い」をしていると、この住民は語る。
ツイッター上で地元の情報を発信している「尚@真備町住人」さんも、やはり町外からの車で、総社~倉敷・岡山方面に抜ける道路が混雑し、「私たち町民にとっての貴重な生活道路及び救助用道路なのでとても困っています」と語る。
「善意のつもりのものが私たちを疲弊させます」
野次馬だけではない。「善意」の訪問者もまた、地元を悩ませている。8日には、倉敷市のこんなツイートが話題になった。
「現在、倉敷市では個人の方からの救援物資を受け付けていませんが、真備町川辺橋前に沢山の支援物資が置かれており、自衛隊の通行の妨げになり困っています。お気持ちは大変ありがたいのですが、支援物資を川辺橋前に置かないようお願いします」
川辺橋は、総社方面から真備地区に入るための橋だ。倉敷市では現在、個人や有志団体などからの支援受け付けを行っていない。にもかかわらず、一部の「支援のお気持ちのある方」(市広報担当者)が、持ち寄った物資を置いていったという。それが、かえって救援を妨害する形になってしまったのだ。
これに限らず、「支援」に駆け付けようとする個人などの車は、野次馬ともども、渋滞を引き起こす一因にもなる。前述の「尚@真備町住人」さんは、「善意はありがたいが、個人での物資運搬及びボランティアは申し訳ないが迷惑です。市役所に問い合わせて欲しい」と訴える。
「善意のつもりのものが私たちを疲弊させます。報道もありがたいが正しい情報ではないこともある。報道の仕方は考えてもらいたい。車は邪魔です。どんどん疲労はたまっています。(中略)物資よりは今後募金や、もっと時間がたってからのボランティアが必要になると思います。『ありがとう』と知らない人に向き合って言うのも今は少し疲れています」
倉敷市の担当者によれば、現在は災害対策本部を通じて、企業などに必要な物資を依頼し、それが順次到着している状況だという。また日程は未定だが、近いうちに義捐金の受け付けを開始するので、支援の気持ちがある人には「どうかそちらを待ってください。近々にお知らせできると思います」。