資生堂化粧品が中国で突如売れ出した  若者の自己顕示とSNSの魔術

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   資生堂は将来性を中国の若い世代の消費者に賭けた。現時点で見る限り、この選択は非常に成功している。

   直近の2017会計年度で、資生堂の中国市場における販売の成長率はグループ全体の業績を上回った。財務報告によると、2017年、資生堂の中国市場における売上高は1443億円で、前年同期比22%増、営業利益は113億円で、52億円だった16年と比べて、117%増となった。若い消費者の高級化粧品に対する需要が高まったことが、中国市場における資生堂の業績向上を牽引する主な要因となっている。

  • 資生堂(中国)のホームページ。商品のPRと販売を中心に構成されている。
    資生堂(中国)のホームページ。商品のPRと販売を中心に構成されている。
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中国版ツイッターで33万リツイート

   中国では、25~35歳の年齢層が資生堂の高級化粧品消費の主力になっている。これまでの常識では考えられない現象で、資生堂中国の藤原憲太郎総代表は、中国以外の市場では、この種の商品は主に40歳以上の顧客層が購入しているとして、この現象を中国市場特有の特徴として中国のメディアの界面-インターフェースに語っている。

「現在、私たちは話題性、爆発性が強烈な販売方式を探し当てたいと思っている。中国市場をウオッチしているうちに、ソーシャルメディア上のホットな話題が若年層に対して強い吸引力を持っていることを発見した」

   資生堂は現在、多くの中国ローカルの人気スター、人気ブロガーなどのKOL(Key Opinion Leader)をブランドの宣伝攻勢に投入し、デジタルメディア、とくにモバイルメディアでの接触を深めている。

   2000年生まれの中国の人気歌手、範丞丞が撮影したCM動画は資生堂の中国版ツイッター、微博(Weibo)の公式アカウントで、1週間に33万回リツイートされ、2万3000件の書き込みがあった。資生堂のそれまでの日常的な微博のリツイート、書き込みはせいぜい数十件だった。

デジタル化とEコマース

   資生堂は2018年3月から着手した「新3カ年計画」で、中国市場におけるデジタル化構築とEコマース発展の加速を明記した。資生堂は同時に、2030年には「全世界で高級化粧品市場のトップ3入りを果たす」と公言し、それには中国の消費者が資生堂の商品を認めるかどうかが鍵となる。

   しかし、5年前は違った。当時、資生堂の国際業務は泥沼にはまっていた。『フィナンシャル・タイムズ』の報道によると、2006年から2013年の8年間に、資生堂グループの売上高の年平均伸び率はわずか0.2%であったが、当時、世界の化粧品業界の平均伸び率は4%を上回っていた。たとえば、2014年、資生堂の中国における伸び率は2.9%で、ライバルであるロレアルの7.7%、ジャスミン太平洋の44%、上海家化(Jahwa)の19.8%に比べて、かなり見劣りしていた。

   2014年、資生堂は同社の伝統を打ち破る歴史的な決定を行った。60歳の魚谷雅彦氏を同社初の外部からの最高経営責任者(CEO)として招聘したのだ。この任命は会社改革における最大の冒険であり、1872年に日本初の洋風調剤薬局として創業して以来、同社のかじ取り役は一貫して全て内部で育成してきた。これはまた日本企業の伝統でもあった。

   魚谷氏は、シティバンク、N.A、日本コカコーラ、クラフト・ジャパンなどの欧米系企業の取締役社長などを歴任。資生堂の問題について「絶えず変化している市場、消費者の価値観、購買行動に迅速に対応していないことにある」と指摘していた。

   2014年末、同氏は資生堂再興計画に着手し、中国市場業務の再建を同時グループ改革の重点とした。

   中国で、より現地化した組織・構造の調整のほか、中国地区特有の改革として、藤原氏は前述した界面-インターフェースに、「資生堂は、特に中国地区におけるEコマースのプラットフォームに対する投資を強化した」と語った。この改革こそが、中国の化粧品市場と消費者の変化に応じた回答だった。

給料の4分の1を美容液つぎこむ若者

   中国市場では今まさに「消費のレベルアップ」が起きている。化粧品業界で言えば、多くの若者が高級化粧品のための出費を惜しまなくなりつつある。市場調査関係機関のデータによると、2017年の中国の大学卒業生の平均月給は4014元(約6万8000円)だが、給料の4分の1をつぎこんで1本の美容液を買うことをいとわない若者は少なくない。

   さらに注目すべきなのは、中国の若い消費者がある商品を使用した後、ソーシャルメディアでその情報をシェアし、宣伝し、友人・知人に購入を勧めたがるという点だ。これは、高級化粧品消費の低年齢化と効果の拡大をさらに顕著にしている。

   具体的な例が、資生堂傘下のCPB(クレ・ド・ポーボーテ)だ。「貴婦人ブランド」と呼ばれ、洗顔フォームは1本500元(約8500円)、フェイスクリームと美容液は1000元(約1万7000円)、2000元(約3万4000円)を下らない。2015年、中国でこのブランドの広告を見かけることもなかったが、突然、火が付いた。資生堂の統計によると、2015~2017年の3年間に、CPBブランドの中国市場における販売高はおおむね3倍増を実現した。

   藤原氏もソーシャルメディアがCPBの人気上昇に寄与してきたことに繰り返し言及し、

「中国の消費者がソーシャルメディアで自己顕示したがり、自分の手に入れた良いものをシェアしたいという思いは、日本国内やその他の市場とまったく異なる特徴だ」

としている。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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