「川島を叩く前に、川島を超えるGKが出てこないと」
「ポジショニング」という言葉が今大会、ほとんど批判材料としてしか使われなかった点も憂慮した。
ベルギー戦の後半31分。MFナセル・シャドリがゴール前で打ったヘディングシュートを、川島は横っ飛びでセーブした。すぐに体勢を整えた。サイドへのこぼれ球からクロスを上げられると、素早く移動。中央のルカクが正面高めに打ったヘディングシュートをのけ反りながらセーブし、ピンチを免れた。
このプレーへの論調について山野氏は、「『正面だから(止められて当たり前)』と言うだけで、『ポジショニングが良かったおかげ』という評価はほとんど見られませんでした」と嘆いている。
川島への批判と同時に見られたのが、「控えの東口順昭や中村航輔だったらもっと上に行けた。チャンスを与えるべきだった」という声だった。これに対する山野氏の考えは「チャンスは与えられてきた。しかしモノにできなかった」というものだ。
「西野朗監督もバヒド・ハリルホジッチ監督も、これまでに2人をテストしてきました。しかし、川島から正GKを奪取できるだけのパフォーマンスは見せられませんでした。だからW杯で起用しなかった。代表は勝利のために今ある力を発揮する場であり、育成の場ではありません」
ロシアW杯出場決定後、東口はハイチ戦(3-3)、中国戦(2-1)、中村は北朝鮮戦(1-0)、韓国戦(1-4)、マリ戦(1-1)に出場。W杯直前のパラグアイ戦(4-2)には、前後半45分ずつ出場機会を得ている。
2人に限らない。川島が所属クラブを失った時期(15年6~12月)以降、代表のゴールを長く守ってきたのは西川周作だった。だが川島は、16年8月に現在所属のFCメス(フランス・リーグアン)に移籍すると、第3GKから正GKまで上り詰めた。代表でも再びチャンスが与えられると、これをモノにし、正GKに返り咲いた。
「川島を叩く前に、川島を超えるGKが日本で出てこないといけません。『(ドイツの)ノイアーや(ベルギーの)クルトワだったら止めていたのに...』などと無い物ねだりをしても意味がありません。日本での人材発掘とレベルアップが必要なのに、それに反するような形で叩いてばかりの風潮には危機感を抱きます」