W杯で見えた「最大の問題点」
山野氏は「強豪国のGKを美化しすぎではないか」との懸念も示した。
「世界のGKは確かにレベルが高いです。しかし今大会は『あれ?』というプレーも多い。スペインのダビド・デヘアは、枠内シュート12本(PK戦含む)のうち1本しか止められなかったといいます。ポルトガル戦でFWクリスティアーノ・ロナウドの正面のシュートを後逸して失点するミスも犯していますが、デヘアのミスはなぜか『シュートが良かったからミスじゃない』と日本では擁護されています。
ポルトガルのGKルイ・パトリシオは、ウルグアイ戦(2-1)でFWエディンソン・カバーニがペナルティエリア内の斜め45度から決めた時、ファーサイドを大きく空けてしまい、そこを突かれました。しかし日本では、『カバーニのシュートが上手かった』とは言われても、パトリシオのポジショニングがどうだったかはあまり語られません。名前で選手の評価を変えるのではなく、他国のGKも同じ姿勢で評価するべきです」
W杯で見えた「最大の問題点」は、「川島批判が高じて、良いプレーまで叩く風潮ができたこと」だという。
象徴はポーランド戦の前半32分、日本の左サイドからDFバルトシュ・ベレシンスキが上げたクロスに対し、FWカミル・グロシツキがペナルティエリア内の中央で放ったヘディングシュートを、川島がラインギリギリでセーブした場面だ。だが、ネット上で「ポジショニングがズレていた。何でもないシュートをスーパーセーブに見せているだけ」という批判もあったとして、山野氏は言う。
「ベレシンスキはクロスだけでなく、直接シュートもあれば、ニアサイドに走り込んでいたFWロベルト・レバンドフスキにスルーパスを出すなどの選択肢もありました。
川島は、一番危険なニアへの直接シュートとスペースへのパスに備えてポジションを取りました。するとクロスをダイレクトで上げられたので、次の対応として素早くステップを踏み、今度は中央で待つグロシツキのシュートに備えました。その一連の流れがあって、あの窮地を切り抜けたのです。紛れもないスーパーセーブですよ。
称賛されるべきなのに、価値を落とすような言動がされました。一度『川島はダメだ』という空気ができると、全てのプレーが否定されるようになっていったと感じます」