石油元売り大手の出光興産と昭和シェル石油の統合交渉が前進した。「企業文化が異なる」などと統合に反対していた出光創業家が賛成に転じたという。2018年6月27日に日本経済新聞(電子版)がスクープした。ただ翌日の大手紙5紙を比較すると、統合が「決着」したのかをめぐり、書きぶりに違いがみられた。
日経(電子版)がスクープを放ったのは27日の14時。東証では出光株に買い注文が殺到し、一時ストップ高を付けた。この日の日経夕刊(東京最終版)は1面トップが「出光・昭シェル統合決着」の横見出し。記事は「2019年春に経営統合する見通しとなった」と断定を避けながらも、「出光側が創業家側の条件を受け入れたため、統合に合意」し、「出光と昭シェルが7月中旬に開く取締役会で最終決定する」と踏み込んだ。
両社「決定した事実はない」
報道を受け、出光は「昭和シェルとの間で経営統合についての協議を継続しており、当社大株主との間で協議も再開しているが、決定した事実はない」とコメント。昭和シェルも「経営統合に向けて出光と協議検討を進めている事は事実だが、現時点で決定した事実はない」と表明した。
翌28日朝刊は日経、朝日、産経の3紙と、毎日、読売の2紙で書きぶりは分かれた。日経は再び1面トップで「出光・昭シェル4月合併」と前日夕刊とほぼ同内容の記事を載せた。
これに近かったのが朝日。1面トップで「出光・昭和シェル統合決着」と断定的な見出しで伝えた。記事では、出光の出光昭介・名誉会長ら創業家の立場について「昭介氏が統合について依然として納得していないとの見方もあるが、創業家の主要メンバーは統合について賛成に転じたと関係者はみている」と紹介した。さらに経済面では、元村上ファンド代表で投資家の村上世彰氏の書面インタビューの内容を、提供された顔写真付きで報じた。村上氏は出光株の1%弱を保有し、出光の経営陣と創業家の間に入って交渉の助言をしてきたという。記事では村上氏について「経営陣と創業家側の対立を和らげるのに一役買ったとの見方が出ている」と紹介した。
産経は「出光・昭シェル統合へ」とシンプルな見出しで、1面2番手の扱い。内容は日経と大差はなかった。
「協議前進」は間違いないが...
毎日は1面に記事を載せたがトップではなく、見出しも「出光、統合へ前進」と慎重だった。記事では「昭介名誉会長の長男正和氏が賛成に転じた」ものの「昭介氏と次男の正道氏は依然反対を続けている」と創業家内の「対立」を具体的に説明している。
最も慎重だったのは読売。1面に記事そのものがなく、2面で「出光 合併へ前進か」「創業家一部 賛成の意向」との見出しで報じた。記事では出光幹部の言葉として「創業家の条件は簡単にはのめない。昭和シェルの了解を取る必要もあり、交渉には時間がかかるのではないか」と書き込んでいる。統合実現にはなおいくつかのハードルがあるとの見立てだ。
5社の報道を見る限り、協議が前進しているところまでは間違いない。スムーズに決着するのか、なお波乱の余地があるのか。見極めるには、もう少し時間がかかりそうだ。