国税庁が2018年7月2日に発表した18年(1月1日時点)の路線価は、全国の平均変動率が前年比0.7%プラスとなり、16年以降3年連続で上昇した。15年まで7年続けてマイナスだっただけに、基調が逆転したと言える。日銀の金融緩和や訪日外国人旅行者の増加が大都市圏を中心にホテルやオフィスビル、商業施設などの建設を促し、地価の上昇につながった。もっとも、人口減少が続く地方圏の多くは路線価のマイナスが続いており、格差解消には至っていない。
全国の平均変動率は2016年0.2%、17年0.4%、18年0.7%と、いずれもプラスになり、上昇幅も拡大している。都道府県別では国内外からの観光客数が過去最高を更新し、人口増加も続く沖縄県が5.0%(17年は3.2%)でトップ。東京都4.0%(同3.2%)、宮城県3.7%(同3.7%)、福岡県2.6%(同1.9%)、京都府2.2%(同1.4%)と続いた。上昇したのは18都道府県(同13都道府県)だった。
3年連続で路線価上昇
下落したのは東北、北陸、四国など地方圏の29県。最も下がったのは、2017年に続いて秋田県で、2.3%(同2.7%)下がった。
今回、マイナスからプラスに転じた都道府県は滋賀、佐賀、長崎、熊本の4県。いずれも中心都市の駅前再開発などでマンションやテナントビルが増えたためという。2017年は横ばいだった石川県がマイナスになった。北陸新幹線開業に伴うホテルやテナントビルの建設ラッシュが一段落したのが要因という。
不動産の専門家によると、3年連続の路線価の上昇は日銀の金融緩和や訪日外国人旅行者の増加など、アベノミクスの影響が強い。しかし、投資マネーが向かうのは、不動産の需要のある都市などに限られる。駅前の再開発で商業施設ができて賑わいが戻ったり、国内外から観光客を呼び寄せたりすることに成功すれば、不動産価値が上がり、地価も上昇する。極端な話、人口減少が続く都市であっても、観光の目玉を作り、多数の観光客を誘致することに成功すれば、地価は上がるという。
バブル期最高値超えは、東京・銀座の鳩居堂前だけ
駅前の再開発などを行なうには、周辺に一定の購買人口が必要で、人口流失や過疎に悩む自治体にとって実現が難しいのは事実。しかし、何も手をつけず、町が衰退するのを放置するだけでは地価の下落も歯止めがかからないというのが専門家の見立てだ。
地方圏の地価下落とは裏腹に、全国の最高路線価は今年も東京・銀座5丁目の鳩居堂前で1平方メートル当たり4432万円だった。バブル期を超えた2017年に続き、2年連続で史上最高値を更新した。
東京都心では新築マンションの価格も上昇しており、バブル再来を懸念する声もある。しかし、東京・銀座の鳩居堂前の地価上昇率は2017年の26.0%に対して18年は9.9%に縮小した。バブル期の最高値を超えたのは、今回も全国で東京・銀座の鳩居堂前だけ。全国のあちこちで地価がバブル期の最高値を次々と更新する事態とはなっておらず、多くの専門家は「現在の地価は実需に基づく上昇で、投機目的で地価が上昇したバブル期とは違う」とみている。