松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(63)らオウム真理教幹部の死刑執行を受け、リスクとして本格的に浮上しそうなのがオウムの後継団体の動向だ。
これらの団体は資産や構成員を増加させており、2018年の大型連休には構成員とみられる女性が、松本死刑囚が収容されていた東京拘置所の周辺を歩く「聖地巡礼」ともとれる動きが報じられていた。今回の死刑執行で、拘置所をイエス・キリストが十字架にかけられた「ゴルゴタの丘」になぞらえるなど、松本死刑囚をさらに神格化する動きも出そうだ。
松本死刑囚の説法のVTRを見せ、幹部が説法で偉大さを強調
地下鉄サリン事件から23年が経過した今でも、後継団体の「麻原信仰」は根強い。公安調査庁が18年1月に発行した「内外情勢の回顧と展望」では、オウム真理教の後継団体「Aleph」(アレフ)と、アレフから分裂した団体「山田らの集団」を「主流派」と位置付けている。
この「主流派」は、「集中セミナー」と称するイベントで在家信徒から参加費などの資金を継続的に獲得する一方で、一連の事件の被害者への賠償金の支払いは17年1~11月の累計で5400万円にとどまった。そういった経緯から、17年10月末時点で教団の資産(現金、預貯金、貸付金)は10億円を超えている。17年には100人を超える信徒を獲得したという。
「集中セミナー」は年3回行われ、在家信徒に対して松本死刑囚の説法のVTRを見せるなどする。3月には松本死刑囚の「生誕祭」が開かれ、全国の施設の800人以上の信徒を集めて幹部信徒が松本死刑囚の偉大さを強調する説法を行ったという。
「『麻原教祖からパワーを得たい』という理由で、拘置所の周りを時計回りに歩く」
こういったことを背景に、松本死刑囚の06年の死刑確定後、東京拘置所周辺で「聖地巡礼」に近い動きが報じられてきた。
15年4月には週刊ポストが、拘置所付近で不審な動きをする若い男女が
「時折拘置所を見上げて手を合わせ、ブツブツと何かを唱えている」
といった様子を複数の公安関係者が確認した、と報じた。
18年5月には、「アレフ」信者とみられる女性が、拘置所の周りを少なくとも2回、計4キロにわたって黙々と歩く様子をフジテレビが報じている。フジテレビはその狙いを
「『麻原教祖からパワーを得たい』という理由で、拘置所の周りを時計回りに歩くという」
と指摘する一方で、「松本死刑囚の死刑執行を避ける祈りも兼ねている」との公安関係者の見方を伝えている。
死刑執行でこういった動きが加速する可能性もありそうだ。菅義偉官房長官は7月6日午前の記者会見で、死刑執行でテロのリスクが高まる可能性について
「事柄の性質上詳細は差し控えたいが、いずれにしろ、警察当局において万全の体制を取っている」
などと述べた。