マニラのスラム街の子供達に夢を与えたいと、近畿大学に在学している男子学生3人が、クラウドファンディングサイト上で25万円の資金を集めようとしたところ、疑問や批判も寄せられて議論になっている。
3人は、厳しい声を考えたのか、サイト上から呼びかけ文を削除した。
「子供達は、遊びも限られ毎日単調な日々を過ごしています」
「スラム街の暮らしを肌で感じたい!」。男子学生3人は、こんなタイトルで「CAMPFIRE」のサイト上で、自らのプロジェクトについてアピールした。
その呼びかけ文によると、3人は、2018年の夏休みの1週間、マニラのスラム街を訪れて、子供達と交流したいという。「子供達は、外部の人との交流が少なく遊びも限られ毎日単調な日々を過ごしています」として、自分たちが子供達に夢を与えたいとした。具体的には、子供達に日本語や日本の遊びを教えたり、フィリピンの遊びを一緒に行ったりすることを挙げている。
そして、このプロジェクトをドキュメンタリー映像に残し、資金提供者らに届けたいとしている。
きっかけは、ある社長と話す機会があり、この社長から、「君には何かひとつ足りていない気がするな。目標とか夢は?」と言われ、海外の貧しい地域へ行くことを勧められたからだという。
フィリピン旅行は、航空運賃が1人5万円など3人で計25万円かかるという。しかし、バイトだけでは賄い切れないとして、クラウドファンディングに頼ることにしたそうだ。
呼びかけ文では、「僕らの発言が誰かの刺激になって欲しい」などと希望を語り、「わがままと言われても周りの意見は気にせず自分たちのやりたいことを全力でやります!」と決意を述べている。
「『なにか』を学習して」と好意的な声もあったが...
近畿大生3人の呼びかけに対し、7月4日までに15万円ほどの資金提供があった。
しかし、サイトのコメント欄やツイッターでは、プロジェクトに対して、疑問や批判が相次ぎ、炎上状態になった。
「勝手にスラム街の子供は単調や遊びで夢がないって決めつけてる」「スラム街の子どもは日本の学生さんの就活の道具じゃない」「旅行行きたきゃバイトしろ。他人の金に頼るな」...
一方、3人の思いに一定の理解を示す向きもあり、
「海外の貧しい地区に行ってくることは大変良い事と思います」「行くことで見えるもの、感じるものが必ずあります」「『なにか』を学習してもっと大きな仕事を成し遂げてください」
といった声が寄せられて、賛否両論が出ている。
炎上が飛び火したためか、プロジェクトの代表者とみられる男性のツイッターやインスタグラムは4日までに非公開になり、その日のうちに、サイトの呼びかけ文も削除された。
近畿大のオーディションではファイナリストに
実は、3人は、ほぼ同じ内容のプロジェクトで近畿大のアカデミックオーディションに応募し、6月に5組のファイナリストの中に選ばれていた。マニラのスラム街「スモーキー・マウンテン」で取材して映像を制作し、「スラム街でこれをやってほしい」との依頼を集めるというものだ。
ファイナリストになった理由について、近畿大の広報室は7月5日、J-CASTニュースの取材にこう説明した。
「やってやるという熱意や実行性のほか、下調べなどして安全面に配慮して計画していた点が評価されました」
審査の結果、3人は優勝できず、活動支援金10万円は得られなかった。
今回、プロジェクトに疑問や批判が相次いだことを受けて、3人が所属する学部は、世間に誤解を与えたなどとして3人を個別に呼んで指導した。一方、ほぼ同じプロジェクトを大学がファイナリストに選んだことについて、広報室では、「批判などのご意見については、真摯に受け止めたい」と話している。