日本のロシア・ワールドカップ(W杯)は、後半残り1分を切ろうかという時間に突き刺さったベルギーのカウンターで、決勝点を奪われた。
このシーンで注目されている選手がいる。途中出場のMF山口蛍だ。カウンター時、高速ドリブルを仕掛けたMFケビン・デブライネと正対する位置におり、対応をめぐって議論が起きている。
約9秒の高速カウンター
2018年7月3日未明のW杯決勝トーナメント1回戦・ベルギー戦は、原口元気、乾貴士のゴールで2点先制後、ベルギーのフェルトンゲン、フェライニのゴールで2-2。目安4分の後半アディショナルタイムに入ると、本田圭佑の直接FKをGKクルトワがセーブし、日本がCKを獲得した。
本田がCKでゴール前に放り込んだボールは、クルトワが直接キャッチ。いち早く中央で前線へ走り出していたデブライネへと素早くパスを投げ、高速カウンターがスタートした。
デブライネがハーフラインを越えた時、相対したのがボランチ山口蛍だ。半身になってジリジリとバックステップを踏んだが、パスコースのカットや十分なディレイ(遅らせること)ができず、ほぼトップスピードを維持されたまま、ベルギー右サイドを駆け上がったDFトーマス・ムニエにスルーパスを出される。ムニエはグラウンダーのクロスを上げ、逆(左)サイドからゴール前に走り込んだMFナセル・シャドリの決勝点につながる。クルトワがボールを投げてからわずか9秒ほどだった。
この場面、ツイッター上では「なんで山口蛍棒立ちだった」と、山口の対応を問う声があがった。だが「棒立ち山口無能説を唱えたい人はどうして欲しかったの?」との反論も出た。
具体的に山口はどんな状況だったか。デブライネのドリブル時、ベルギーのカウンターに参加していたのはムニエとシャドリ、さらに左にFWエデン・アザール、最前線にFWロメル・ルカクがおり、少なくとも計5人。
一方、CKのため前線に人数をかけていた日本の守備陣は、山口と、ルカクをマークしていたDF長友佑都、中央~逆サイド(シャドリとアザール)のスペースをケアしていたMF長谷部誠の計3人。山口は目の前のデブライネと、長友・長谷部がケアしきれないムニエの2人を気にしなければならないような状況にも映る。
そのムニエは、ルカクがいったん右サイドに張り出してから斜めに中央へ、マーカーの長友を引き連れながら走ってできた広大なスペースを使い、デブライネのスルーパスを引き出した。スルーパスの瞬間、長友は受け手のムニエへやや遅れてチェイス、その分空いたルカクのマークは長谷部にスイッチした。
マークがつくルカクは、ムニエのクロスをスルー。ルカクの先でフリーだったシャドリがダイレクトでゴールに流し込んだ。相手ゴール前から全速力で戻っていた昌子源は、あと少しのところでシュートに間に合わなかった。