試合終了の笛と同時に、多くの選手が泣き崩れた。
2018年7月3日未明、ロシア・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦・ベルギー戦は、後半終了間際に逆転ゴールを浴び、2-3の惜敗。そのシチュエーションに「ドーハの悲劇」をよぎらせる人がインターネット上で相次いだ。同時に、日本代表の「成長」を感じさせたのは長谷部誠の姿だったようだ。
2点先制からの逆転
まさに死闘だった。大会屈指の破壊力を誇るベルギー攻撃陣に、日本の守備陣は集中力を保ち続けた。ペナルティエリアに侵入されても最後まで足をのばしてブロックし、FWロメル・ルカク、エデン・アザール、ドリース・メルテンスらのマークは最後までついていった。
耐え続けるDF陣に、攻撃陣が応えた。0-0で迎えた後半3分、柴崎岳からのスルーパスを受けた原口元気が先制弾。さらに同7分、中央で香川真司からパスを受けた乾貴士のミドルシュートで2点目。2-0とリードしたのだ。
だがこれが優勝候補に火をつけた。後半24分にDFヤン・フェルトンゲンのヘディングで1点差とすると、同29分にはMFマルアン・フェライニが同点弾をたたき込んで2-2。
日本はMF本田圭佑らを投入して攻勢に出る。後半47分に大迫が取ったFKで、本田が無回転シュート、枠内に飛んだがGKティボー・クルトワに阻まれた。
そして訪れたのが後半終了間際の49分、ベルギーのカウンター。一気に右サイドから前線へ推進すると、逆サイドから駆け上がった途中出場のMFナセル・シャドリに逆転ゴールを決められた。
2点リードから奪われた試合終了間際のゴールに、多くの選手がその場に崩れ落ちた。マークにつき切れなかったDF昌子源は力なくピッチに仰向けに倒れた。すぐに試合は再開されたが、その後2-3で無情のホイッスル。勝利はあと1歩、届かなかった。昌子、乾、原口ら、選手たちは泣き崩れた。
勝利の可能性が、残り1分もない中、するりと抜け去ってしまった。日本中で感動を呼んだが、同時に多くの人がフラッシュバックさせたのが、1993年のドーハの悲劇だった。日本史上初のW杯出場をかけた最終予選で、イラク相手に2-1とリードしながら後半終了間際にカウンターで同点弾を浴び、W杯の切符を掴めなかったその光景と、似通うものがある。ツイッターでは
「ドーハの悲劇デジャブだわ」
「サッカーの本当の怖さを知ったし、ドーハの悲劇を追体験したようで、なんだか凄いものを見てしまったような」
「ドーハの悲劇を思い出した。ピッチにうずくまる選手たち。サッカーというゲームの残虐さ。しかし、プレーの質は全く別の国のように進歩した」
と健闘を称える声が続出。すでに試合会場から「ロストフの悲劇」などと言われている。