日銀指摘の3点は「先進国に共通すること」
唯一取り残された格好の日銀の決定会合では、9人の政策委員のうち8人の賛成で金融政策の維持をきめた。反対の片岡剛士・審議委員は2017年7月の就任以降、一貫して反対票を投じているが、早期に出口を考えろというのとは全く逆に、もっと緩和しろという立場からの反対票だ。
消費者物価上昇率(CPI)の生鮮食品を除く総合指数は、人手不足による人件費の上昇や原油高などで2017年から上昇し、18年2月には前年同月比1.0%に。しかし、雇用は改善しているが賃上げの勢いは弱く、3月は1年8か月ぶりに前月を下回り、4月は0.7%に鈍化。18年度を通した上昇率見通し1.3%の下方修正は不可避とみられている。
同じように景気回復と言いながら、なぜ、日本だけが金融正常化が遅れるのか。日銀は、物価上昇率が鈍い理由として、いくつか指摘している。(1)失業率が下がっても非正規など低賃金の労働者が多く、賃金全体が上がりにくい、(2)新興国の台頭で安価な製品が増えている、(3)ネット通販の普及で、より安い買い物がし易くなっている――などだ。ただ、「これらの多くは日本だけというより、先進国に共通することで、日本の物価の低迷の説明には不十分」(大手紙経済部デスク)。黒田総裁は「物価が上がらない状況は、さらに議論を深めていく必要がある」とも述べ、次回の7月会合で、物価が上がらない理由を再点検する方針を示した。
政府・日銀が目指す物価上昇率2%の実現がいよいよ遠ざかる中、ゼロ金利による金融機関の収益圧迫、上場投資信託購入による株式市場の価格形成のゆがみなどの副作用への批判も高まる一方だ。特に、金融機関へのダメージは金融仲介機能の低下などにより実体経済に悪影響が及び、さらに物価を下押ししかねないとの指摘も強い。黒田総裁は「現在の金融緩和を粘り強く続けることが適当」と繰り返すが、日銀が欧米を追って、そう遠くない日に緩和策の修正に動く可能性が市場で意識され始めている。