韓国と北朝鮮の雪解けが続く中、南北が改めて鉄道で結ばれる日は遠くないかもしれない。2018年4月27日の南北首脳会談後に出された「板門店宣言」で南北の鉄道を接続することで合意し、そのための共同調査の日程が決まった。
仮に韓国と北朝鮮が高速鉄道で結ばれたとすれば、ソウルから中国・瀋陽まで3時間で行けるようになるとの試算もあり、中国と韓国が「日帰り圏」になりそうだ。韓国と中国やヨーロッパを結ぶ物流コストの大幅な削減も期待される。ただ、北朝鮮の鉄道は老朽化が進んでおり、様々な面で実現までのハードルは高そうだ。
南北境界線付近~中朝国境地帯の鉄道の整備を進める
南北の鉄道は朝鮮戦争以来長い間分断されてきたが、07年5月に57年ぶりに結ばれた。黄海側を走る京義(キョンギ)線の汶山(ムンサン)駅から開城(ケソン)駅、日本海側を走る東海(トンへ)北部線の金剛山青年駅から猪津(チェジン)駅の2ルートで試運転が行われたが、それも南北の関係悪化で08年11月末に中断。10年近くにわたって再び分断状態が続いてきたが、南北首脳会談で情勢が変化した。
「板門店宣言」で、
「南と北は、民族経済の均衡ある発展と共同繁栄を達成するために、10・4宣言で合意された事業を積極的に推進して行き、一次的に東海線および京義線鉄道と道路を接続して近代化し、活用するための実践的な対策を取っていくことにした」
と盛り込まれたからだ。宣言の中にある「10・4宣言」とは、07年の南北首脳会談後に出された宣言のことで、北朝鮮南部の開城(ケソン)と中朝国境の新義州(シニジュ)間の鉄道の改修についても盛り込まれていた。つまり、南北境界線付近~中朝国境地帯の鉄道の整備を進める、という趣旨だ。
6月26日には板門店で南北による分科会が開かれ、北朝鮮側区間の共同調査を7月24日から始めることで合意した。
北朝鮮側の改修は安保理の制裁決議解除が前提
南北の鉄道がつながることへの期待は高い。韓国のニュースサイト、オーマイニュースによると、ナ・フイスン韓国鉄道技術研究院長は、朝鮮半島を縦断する鉄道と、アジアを横断する鉄道が接続された場合は「中国、インド、日本、ロシアで旅客需要がある」とみる。さらに、高速鉄道が建設された場合は、ソウルから中国・瀋陽まで3時間と試算。すでに高速鉄道が開通している瀋陽-北京間と合わせるとソウル-北京間が6時間で結ばれることになり、「北東アジア1日生活圏が可能」と期待を寄せている。
ロシア経由のニーズもある。13年には、北朝鮮北東部の羅先(ラソン)特別市にある羅津駅(ラジン)駅と、ロシア沿海部のハサンを結ぶ鉄道が開通。物流に関する実証実験が行われていたが、16年1月の核実験で中断していた。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は6月22日にモスクワで行ったプーチン大統領との首脳会談後の共同声明で、
「(双方が)韓国-ロシア・ヨーロッパを接続する鉄道網の構築への関心を確認した」
という文言を盛り込み、再開を後押ししたい考えだ。
ただ、技術的、政治的ハードルは高い。鉄道は単に線路を接続すれば運行できるというものではなく、信号システムの連携が不可欠。こういった面も合わせて老朽した北朝鮮側の改修が必要だ。改修コストを北朝鮮だけで負担するのは現実的ではなく、韓国などが支援することになるとみられる。ただ、現時点ではこういった支援は国連安保理の制裁違反になる可能性が高く、制裁解除のためには北朝鮮の非核化が必要だ。