民泊仲介サイトの米エアビーアンドビー(Airbnb)が、2018年6月15日の「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の施行後も、仲介サイトに数千件の違法なヤミ民泊を掲載し、削除を進めていることがわかった。エアビーは自社の「検知システム」でヤミ物件を削除しているが、エアビーの日本法人・Airbnb Japanの山本美香・公共政策本部長は「我々が体力的に追いついていないところがあり、不安をかけて申し訳ない」と釈明するばかり。ヤミ民泊がサイトから完全に消える見通しは立っていないという。
この問題については、京都市などがエアビーのサイトに15日以降も違法なヤミ民泊の物件が掲載されていることを見つけ、観光庁に連絡。朝日新聞などが21日に報じたことから、マスコミ報道が相次いだ。エアビーは新法施行の15日以降はヤミ民泊を掲載しないと表明していたが、現実に公約は実行されていなかった。民泊業界をリードするはずのエアビーの対応はお粗末な限りで、企業としてコンプライアンス(法令順守)の体制が厳しく問われそうだ。
届け出番号の原本のコピーを提出させる業者も
新法で届け出が受理された民泊事業者には都道府県ごとに9ケタの届け出番号が割り当てられたが、エアビーのサイトには実在しない届け出番号が15日以降も掲載されていた。観光庁によると、新法施行後、ヤミ物件をサイトで紹介しているのが確認されたのはエアビーだけという。エアビーのライバルに当たる国内の仲介業者は自社のサイトに民泊物件を紹介する際、家主らに届け出番号の原本のコピーを提出させるなど、コストと時間をかけ確認作業を徹底しているが、エアビーは原本の確認作業など行なっていない。
エアビージャパンの山本本部長は「我々が想定していなかった悪用が(民泊の家主側に)あることがわかった」と、他人事のように語ったが、そもそもエアビーの民泊物件に対するチェック体制が甘かったのではないか。山本本部長は家主らが架空の届け出番号をエアビーのサイトに入力しても、不正を見抜く独自の検知システムがあると説明したが、具体的な仕組みについては公表しなかった。検知システムにはAI(人工知能)などは用いられていないという。
「検知システムを日々努力して向上させていく」と説明
山本本部長は「数が非常に多いので、なかなか追いつけない。検知システムを日々努力して向上させていく」と述べ、現行の検知システムが機能していないことを認めた。民泊新法は都道府県への届け出によって違法なヤミ民泊をなくし、訪日外国人旅行者らに健全なサービスを提供するのが目的だ。エアビーなど仲介業者も従来のように違法なヤミ民泊をネットで紹介できなくなったのは言うまでもない。
山本本部長はマスコミ各社の問い合わせが殺到した6月21日、東京都新宿区のエアビージャパンで事実上の記者会見を開き、この問題の経緯について説明した。しかし、テレビなどの映像撮影は許されず、自社に都合のよい説明に終始し、企業として情報公開と説明責任を果たしたとは言いがたかった。観光庁はエアビーに事実確認と報告を求めており、必要に応じて業務改善命令などの行政指導を行なう方針だ。