大相撲横綱日馬富士が2017年秋巡業の時に貴ノ岩を暴行した事件は当時、新聞、テレビ、ネット、週刊誌で連日報道された。NHKニュースさえ「過剰報道」ではなかったかとの調査結果を早稲田大学大学院生が2018年6月23日、東京・学習院大学で開かれた日本マス・コミュニケーション学会で発表した。
産経、ツイッターなどはニュース共振
調査対象とした「NHKニュースウォッチ9」はその日のニュースをまとめて伝えるNHKの看板番組である。日馬富士の暴行疑惑は11月場所の3日目2017年11月14日に「スポニチ」のスクープでニュースとなった。調査期間はこの14日のニュースから始まり12月10日までの27日間。この間、日馬富士問題がトップで扱われたのは9回、2番目、3番目までの扱いを含めると17回21%だった。この期間でトップ扱い回数が2番目は北朝鮮関連で、両者を合計すると15回、ほとんど毎日トップニュースは日馬富士か北朝鮮だったことになる。
発表したのは同大学院教育学研究科の川瀬学さん。川瀬さんは産経新聞メディア営業局の部次長で、当時大学院生として研究していた。
放送時間を計算すると日馬富士関連は2時間17分52秒、北朝鮮関連は1時間46分45秒。この期間の「ニュースウォッチ9」放送時間は合計23時間なので日馬富士関連ニュースが17.7%の時間を使ったことになる。
川瀬さんの問題設定は、テレビとネットのメディア共振関係だった。テレビとネットがニュースを共振して拡大しているのではないかという仮説だ。産経ニュース(Web)、ツイッター、グーグルトレンドも調べた。NHKニュースとネットメディアの共振性は必ずしも明らかではなかったが、ネットの情報量は産経、ツイッター、グーグルの3者がほとんど連動していた。日馬富士引退が伝えられた11月29日はテレビもネットも情報は最高に達し、同日のツイッターは7万6972件。
川瀬さんは「報道の内容を見ていて、過激な言葉がよく使われているのが気になった。たとえば、異例といった表現が多かった」と言っている。