サッカーのロシア・ワールドカップ(W杯)ポーランド戦の予想布陣で、ここまでの2戦から先発メンバーを6人も変更する一方で、GK川島永嗣が続投する見込みだと報じられ、賛否があがった。
川島のパフォーマンスには批判が根強い。しかし、西野朗監督は試合前日会見で川島を同席させた。なぜ指揮官の信頼は揺るがないのか。
香川、乾、大迫ら変更か
2018年6月28日の複数スポーツ紙には、日本サッカー協会関係者談として、同日のポーランド戦予想布陣が掲載された。日刊スポーツ、スポーツ報知、スポーツニッポンは以下のメンバーで完全に一致している。
FW ○武藤嘉紀、○岡崎慎司
MF ○宇佐美貴史、○山口蛍、柴崎岳、○酒井高徳
DF 長友佑都、○槙野智章、吉田麻也、酒井宏樹
GK 川島永嗣
○印の選手が、同じ11人だった1・2戦目からの変更。DF昌子源、MF長谷部誠、乾貴士、香川真司、原口元気、FW大迫勇也の6人が入れ替わっている。
一方で注目されたのが、失点直結の「ミス」を連発したと批判を浴びているGK川島が続投という点だ。報道後、ツイッターでは「川島残して6人も変えるんだね。川島は変えて」「先発6人入れ替えって、本当に大丈夫か。その中に川島は含まれない」などと変更を望む声が漏れた。
だが、西野監督の川島への信頼は変わらないようだ。セネガル戦ではキャッチングでなくパンチングを選択し、跳ね返りがゴールに吸い込まれるという痛恨のミスを犯した。西野監督は試合後、この失点を残念がった一方で、「その後のリカバーは永嗣らしい。修正してピンチも救った。彼も悔やんでいると思うが、トータルで考えればというところ」と悲観していない。
信頼の背景には、西野監督が代表スタッフに入閣させた下田崇GKコーチ(42)の存在があるかもしれない。J1・サンフレッチェ広島のGKとして長くプレーし、1996年アトランタ五輪代表として西野監督のもと「マイアミの奇跡」も経験した縁がある。
下田コーチは、27日の中国新聞によれば、川島について「悔しいプレーはあったが、一つ一つの技術が高いし、セーブの集中力は(他の選手と)違う」「DFへのコーチングを含め、他の選手への影響力は大きい」と高く評価。その根本には、W杯3大会目、欧州リーグで8季戦っているなどの莫大な「経験」があるとしている。控えのGK東口順昭(32)と中村航輔(23)と決定的に異なる点だ。
微笑しながら「PKに関しては、まあ無いことを願っています」
経験にもとづくものなのか、川島の動揺の無さは、西野監督とともに出席したポーランド戦前日会見にも表れていた。
厳しい批判があることについて問われても、「代表としてプレーする以上、批判されることへの覚悟がなければこの場にいない。前の試合より、次の試合で何ができるか。前の試合はチームメイトに助けられた。次は自分がチームを助けられるようにしたい」と力強く語っていた。また、今大会はPKの数が過去最多となっているが、微笑しながら「PKに関しては、まあ無いことを願っています」と冗談も言っている。
FIFAは会見の動画をアップしている。これを見たツイッターユーザーからは、「あれだけ酷いプレーをしておきながら、代表の記者会見に出るなんて、どう言う神経しているのか?」などの非難もあったが、
「川島の会見を見るに、『吹っ切れたかな』という顔しとるな」
「前日会見みたけど川島良い顔してたよ。堂々としてた」
と、前向きな声もあがっていた。
ミスがクローズアップされやすい宿命にあるGKだが、川島は好セーブも少なくない。たとえばセネガル戦(2-2)の前半39分には、吉田麻也のマークを振り切って抜け出したFWニアンのシュートをセーブするなど、決定機を阻止する場面もいくつかあった。
だからといって2失点していいことには当然ならないが、西野監督がこうしたプレーも考慮している可能性はある。元U-20ホンジュラス代表GKコーチの山野陽嗣氏は27日にツイッターで、
「川島選手のミスは批判されても仕方ないですが、他の選手のミスもあり、また川島選手にも他の選手にも良いプレーもあったので、そこら辺をもっと総合的に見て欲しいですね。西野監督が川島選手について『トータル的に考えれば』と発言してたのもそういう事でしょう」
との意見を発していた。