「ニッポン!」の掛け声が響く夜の道頓堀、欄干を乗り越えたサポーターが、一人、また一人と川へと飛び込んでいく――サッカーのロシア・ワールドカップ(W杯)、日本代表は予想以上の健闘中だ。そんな中、大阪で繰り返し演じられたのが、この「道頓堀ダイブ」である。
困っているのが、大阪市の吉村洋文市長だ。ポーランド戦を直前に控えた2018年6月27日深夜、ツイッターでは、テレビ局などメディアへの苦言が飛び出した。
戎橋には「危険」と貼り紙も
恒例「ダイブ」の現場となっているのは、道頓堀川にかかる戎橋だ。日本代表の試合が行われた19日夜、25日未明には多くのサポーターが集まり、お祭り騒ぎに。デイリースポーツ(ウェブ版)の27日配信記事によれば、セネガル戦後の25日未明には、実に20人が夜の水面に身を投じた。
とはいえ、「ダイブ」には万が一の事故のリスク、そして衛生面でも問題がある。さらに今回は、サポーターたちが一斉に飛び跳ねたことで、想定を超えた負荷がかかり、戎橋がぐらつく場面も。
これまでにもツイッターなどで注意喚起してきた吉村市長だが、決勝トーナメント進出がかかるポーランド戦を前に、「ダイブ」を取り上げるメディアへの不満をつぶやいた。
「テレビメディアが、道頓堀にダイブするところを放送して、『今、一人飛び込みました!また、次の人が飛び込みました!』って面白おかしく放送するのも問題だよ」
過去には「テレビ自粛」の要請も
実際、一連の「道頓堀ダイブ」の様子は、複数のテレビ局が紹介している。たとえばセネガル戦後の25日朝の「とくダネ!」(フジ系)では、未明の「ダイブ」をVTRで取り上げていた。
「えー、いま男性が一人、川に飛び込みました!」
と叫んだのは、橋の下の「ベストポジション」から、その様子を取材していた女性レポーターだ。VTRでは続けて、「後ろ向きです! 後ろ向きで飛び込みました」「服を着用した男性です、靴下をはいたまま飛び込みました」と叫び続ける。
その後のナレーションでは「危険な行為」と断じたものの、市長が言うように「面白おかしく放送」していると言えなくもない。
テレビ放送がダイブをあおっている、との見方は、これに始まったものではない。2003年、阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝を果たした際には、事前に地元商店会が放送の「自粛」をテレビ局に要請した。
マスコミのせいで「飛び込みで有名な場所に」?
実際に阪神が優勝を決めると、NHKは映像を使わなかったが、複数の民放ではそのまま、ダイブの様子を電波に乗せた。当時の商店会長は、「マスコミが載せるので、飛び込みで有名な場所になってしまった。報道の自粛もお願いしてきたが、何も変わらない」とぼやいている(東京新聞、2003年9月17日付朝刊)。
さて話を戻すと、吉村市長のツイートはこう続いている。
「そして、もし、死傷者が出たら、『行政は何をしてたのでしょうか!』と報道するだろう」
道頓堀川への飛び込みでは、2015年に「年越しダイブ」を行った韓国人観光客1人が亡くなったこともある。市では今回、26日付で「危険!やめて!道頓堀川への飛び込み・戎橋などでのジャンプ!」と題した文書をサイトに掲載するなど、ダイブ・飛び跳ね行為をしないよう呼びかけている。