長引く「森友・加計」問題で黄信号が灯ったと考えられてきた安倍晋三首相の自民党総裁3選が、再び「青信号」に近づいてきた。
石破茂元幹事長が2018年6月24日、通常国会が閉会する7月22日にも総裁選に立候補する意向を表明したものの、共同通信の調査によると、安倍氏が国会議員票の過半数を確保する勢い。前回12年の総裁選では石破氏が党員票で安倍氏を上回ったものの、直近の世論調査では安倍氏が優勢だ。ただ、小泉進次郎筆頭副幹事長をはじめとして、投票態度を明らかにしていない国会議員も多く、情勢には流動的な部分も残っている。
2012年より「党員票」の重み増す
安倍氏の総裁任期は9月30日まで。総裁公選規程では、議員票の投開票を任期満了の前10日以内に行うとしており、9月下旬に予定されている外交日程を踏まえると、「9月7日告示、20日投開票」の日程が有力視されている。安倍氏は15年には無投票で再選されているため、実質的な総裁選が行われるのは12年以来6年ぶり。12年と大きく違うのが、全国の党員による「党員票」の扱いだ。
12年の総裁選では、党員票300票と国会議員票198票の計498票で争われ、1回目の投票で石破氏が党員票の過半数にあたる165票を獲得。議員票34票と合わせて199票を得た。対する安倍氏の得票は党員票87票と議員票54票の141票にとどまったが、国会議員のみによる決選投票で逆転して当選した経緯がある。
ところが、13~14年にかけて行われた総裁公選規程の改正で、党員票が国会議員票と同じだけ割り当てられることになった。党所属の国会議員数は18年6月時点で405人なので、党員票405票と国会議員票405票の計810票で争われる。12年に比べて党員票の重みが増したことが分かる。これまでは国会議員のみで行われていた決選投票でも、県連に1票ずつ割り振られることになった。つまり、党員票47票と国会議員票405票の計447票による争いだ。
無派閥・小泉氏のグループはどう動く?
ただ、こういった状況を踏まえても現時点では安倍氏が優勢に見える。まずは国会議員票について。すでに細田、麻生、二階の3派が派閥として安倍氏を支持する方針を決めており、これだけで197人。これに加えて、共同通信によると、無派閥の国会議員73人のうち約4割の31人が安倍氏の3選を支持する意向を示しているといい、合計すると過半数の228人に達する。
党員票も現時点では安倍氏に追い風のようだ。党員票の動向として参考になるのが世論調査。毎日新聞が6月23~24日に行った調査では、「次の自民党総裁に誰がふさわしいと思いますか」という問いに対して最も多かったのが安倍氏で、5月の前回調査から5ポイント高い21%だった。これに対して石破氏と答えたのは前回よりも3ポイント低い17%だった。小泉氏の名前を挙げたのは1ポイント高い18%。内閣支持率は5ポイント高い36%だった。ほぼ同時期に行われた日本経済新聞とテレビ東京による調査でも、同様の傾向が出ている。
ただ、無所属の小泉進次郎氏は、12年は石破氏に投票。小泉氏は18年3月、4回生以下の議員約30人でつくる政策グループ「2020年以降の経済社会構想会議」を発足させており、動向が注目される。
今回の総裁選ではこのほか、岸田文雄政調会長、野田聖子総務相の出馬が取りざたされている。