グルメ漫画にも登場する老舗の飲食店「珈穂音(カポネ)」が、現在入居している紀伊國屋ビルディング(東京都新宿区)での営業を閉じることになった。
この建物は大手書店「紀伊國屋書店」の所有で、昨年、歴史的建造物に指定されたばかり。SNSでは店に立ち退きを迫った、との情報が拡散されているが、はたして事実なのか。店および紀伊國屋書店に取材すると...。
グルメ漫画にも登場する人気店
カポネは、1964年創業の和食レストランだ。創業当時からJR新宿駅から徒歩5分の紀伊國屋ビルディング地下一階にある飲食フロアに店を構え、夫婦と息子を中心に切り盛り。座席数29席ほどのこじんまりした店内はどこか懐かしいレトロな雰囲気であふれる。
ロールキャベツ定食やカキフライ定食などのランチメニューが人気で、夜は全国各地の地酒を揃えた居酒屋に変身。グルメ漫画『食の軍師』で紹介されるなどファンも多い。
だが、とあるツイッターユーザーが2018年6月18日、こんな投稿をした。
「紀伊国屋書店新宿店地下1Fの名店「珈穂音(カポネ)」が今月中で閉店するという。昨年あの建物は都の歴史的建造物に選定されたので、紀伊国屋はもう建て替えを理由にテナントに立ち退きを迫らない筈なのだ。ご主人に伺ったら、紀伊国屋の若い課長の『これからは大手の時代』の一言にブチ切れたそうだ」
営業は場所変えて続ける予定
カポネの公式サイトを見ると「諸般の事情によりカポネは7/25(水)を持ちまして閉店させて頂く事となりました」 との告知もあり、閉店は事実のようだ。
ツイートは4400リツイート(6月26日現在)と広く拡散され、
「カポネさん、美味しいのに、、、」
「珈穂音が!?どうにか残って欲しいけど」
と惜しむ声が続出。そのほか「紀伊國屋のセンスを疑う」「何が『大手の時代』だ」と、紀伊國屋書店の対応を疑問視する声も上がっている。
店主の息子は6月19日、J-CASTの取材に応じ、先のツイート内容をおおむね認めた。
紀伊國屋書店と交渉にあたった父親からの話として、同書店側から契約更新の時期を従来よりも大幅に短縮した「2年更新」と提示され、
「2年後には(再更新について)何もこっちが言えない契約になってしまった」
また、ツイートにあった「これからは大手の時代」との発言もあったといい、店主は業を煮やして退去を決意したという。
今後は場所を変えて営業を続ける予定だが、現時点では「まだ場所は見つかっていません」
紀伊國屋書店「大変困惑」
紀伊國屋書店の見解はどうか。
同社の総務部広報担当者は6月20日、J-CASTの取材に
「紀伊國屋ビルディングについては、東京都から2017年3月に歴史的建造物に選定されたものの竣工から50年以上経過し、耐震性の問題もあるため、将来的に立て替える可能性もあることを見込んで、紀伊國屋ビルディングのテナント様との間で一定の交渉は行ったこともあるものの、当社からテナント様に対し、一方的に立ち退きを命じたような事実はございません」
と書面で回答。交渉内容については、
「当事者間の守秘義務事項または協議事項であるため、開示は控えさせていただきます」
SNS上で批判が寄せられている件については、
「当社担当者がカポネ様に対し、『これからは大手チェーンの時代』と発言したとか、当社がカポネ様に対して一方的に立ち退きを命じた等、事実と異なる情報を前提としたご意見」
だとして、「大変困惑している」とキッパリ。
「今後も事実と異なる情報が拡散するような事態が続く場合、当社としては、然るべき対応をとることも検討したいと思います」