「孤立している」と言われてきた日本代表の本田圭佑だが、ロシア・ワールドカップ(W杯)での振る舞いを見たインターネットユーザーからは、真逆の評価が聞こえ始めた。
「和を乱したりはしてない」「仲よさそう」といった声が出ているのだ。W杯の2戦で見えたいくつかのシーンから感じ取られている。
岡崎と息の合った「敬礼ポーズ」
2018年6月25日(日本時間)のW杯セネガル戦、後半33分に本田の見せ場は訪れた。大迫勇也が右に流れてクロスを上げると、逆サイドのゴールラインギリギリで乾貴士が追いついた。中央では岡崎慎司がゴール前に飛び込み、相手GKの飛び出しを誘いながら、DFの注意も引きつけた。後ろからフリーでゴール前に走り込んだ本田は、乾が折り返したボールをダイレクトシュート。起死回生の同点弾を生んだ。
本田はゆっくりとコーナーフラッグに向かって走りながら、顔は仲間の方へ向け、笑顔で舌を出した。大迫が真っ先に近寄り、肩に飛びついた。柴崎岳もすぐに駆け寄り、笑顔で肩を叩いた。同い年の盟友・長友佑都とは、ガツンと胸を合わせた。アシストの乾は笑って指をさしながら抱きついた。そして「つぶれ役」を担った岡崎と向かい合うと、息の合ったお茶目な「敬礼ポーズ」で喜びを分かち合った。
「本田のゴールパフォーマンスで日本選手達の仲の良さが分かる」という声がツイッターであがるように一体感が表れていたと言えるが、協調性を感じさせたのはゴールシーンに限らない。
ベンチにいた前半14分、本田は立ち上がって「落ち着け」と手のひらを下に向けるジェスチャーで、選手たちに声をかけた。前半11分にセネガルに先制点を許した直後のことだ。
接触プレーで試合が一時中断した前半33分には、本田が乾を呼び、助言した。中継の日本テレビで解説した元日本代表・都並敏史氏は、「経験のある本田が試合に出られない悔しさを押し殺して、乾に外から冷静に見てアドバイスできる。チームにとって本当に大きいこと」と献身性を指摘した。
すると直後の前半34分、その乾が長友のアシストで1-1に追いつく同点弾を叩き出した。本田はもみくちゃになる乾に駆け寄り、頬をほころばせて頭をバンバンと叩いていた。
「和を乱したりはしてない」
出場すれば守備でも奔走した。ディフェンスリーダーの吉田麻也とやり取りを繰り返した。後半アディショナルタイムには、日本のゴール前に上げられたロングボールに、本田が自陣ペナルティエリア深くまで下がって競り合った。2-2で終え、貴重な勝ち点1をもぎ取った。
ツイッターでは、こうしたチームの一員としての本田を前向きに捉える投稿が複数見られた。
「別に和を乱したりはしてないやん しっかり応援して声掛けてええやん」
「試合中や試合後の様子を見ても、孤立している様子は全くない」
「周囲とコミュニケーション上手く取れてるし、俺はやっぱ好きだな」
「思ってたより本田ってチームと仲いいのね」
「本田、ソロプレーで周りからの目が可哀想だなって思ってたけど仲よさそうで微笑んだ」
チームでの和を感じさせるシーンは、19日のコロンビア戦でもあった。大迫の決勝点をアシストした本田。試合後、バックアップメンバーとして帯同していた浅野拓磨(20日に離脱)に自ら歩み寄った。手をバチンと合わせ、グーを突きあわせると、指を曲げて両手を前に突き出す浅野のゴールパフォーマンス「ジャガーポーズ」を2人で合わせた。
このシーンはひそかな注目を浴びた。ツイッターでは
「サブメンバーだった浅野を思ってかジャガーポーズをしていた本田」
「仲間を思いやる心はすごくあると思う」
「普段の本田さんは結構ひょうきんなんやろうね」
といった書き込みが複数見られた。
「スタメンかサブか分からないが...」
5月30日のガーナ戦、6月9日のスイス戦と先発起用されながら、W杯本戦2試合ではベンチスタートに甘んじている。最後のテストマッチとなった12日のパラグアイ戦は出場機会がなく、一方でチームは4得点。味方がゴールした瞬間に本田の険しい表情が映ると、ネット上でも批判を浴びた。
だがその後、心境の変化があったのは間違いない。複数メディアによればセネガル戦後、「1点がベンチにいても嬉しい。サブでこれだけ前向きに考えられたのは、これまでのサッカー人生でなかった」と語っている。W杯直前の17日の時点でも、「スタメンかサブか分からないが、どちらでも与えられた役割で結果にコミットできるかどうか」と、自身のチーム内での立ち位置を見極めたような発言をしていた。
6月13日、32歳の誕生日には、長友がツイッターに「おめでとう」と投稿。岡崎、東口順昭ら「86年組」と4人で撮った写真で祝った。仲間内の集合写真に登場することは多くない本田だが、「いつもありがとう!」と返信していた。チーム内での和を感じさせる一幕だった。