日本人拉致被害者をめぐる米国発の情報が波紋を広げている。北朝鮮が日本との首脳会談に備えて、日本人拉致被害者の遺骨を「特別管理」している一方で、「国家保衛省の完全管理下」で生存している人もいる、というのだ。
この情報は北朝鮮の「消息筋」によるものだとされ、米政府系のラジオ局「自由アジア放送」(RFA)が2018年6月18日(現地時間)に伝えた。この消息筋は、1977年に拉致された横田めぐみさん(当時13歳)は死亡したとしているが、死亡時期や横田さんの朝鮮名など、これまでの北朝鮮側の主張と食い違っている点が多い。
生存者は「名前は分からないが、工作員に日本語を教えている」
RFAは「平壌の消息筋」の話として、
「日朝会談が予想されるため、国家保衛省幹部が最近、日本人の遺骨が安置された平壌市楽浪(ランナン)区域の納骨堂にやってきて、遺骨の状態が正常かどうかを再点検している」
と伝えている。
横田めぐみさんの朝鮮名は「キム・ソンミ」で、2012年4月に死去したといい
「過失殺人罪で有罪判決を受け、10年に1号教化所(刑務所)に送られた。その後精神疾患で平壌市勝湖(スンホ)区域49号病院に移送され、治療中に死亡した」
と説明されている。
一方で、平壌市郊外の「招待所」で生存している日本人拉致被害者もおり、「生活は完全に国家保衛省に管理されている」と説明。
「彼ら(生存者)の名前は分からないが、(工作機関の)偵察総局幹部や工作員に日本語を教えている」
という。
2004年に提供された「遺骨」は別人のものだった
今回の「消息筋」の話は、これまでの北朝鮮の主張と食い違っている点も多い。北朝鮮は、横田さんの朝鮮名は「リュ・ミョンスク」で、1993年3月に平壌市内の病院でうつ病で自殺したと説明していたが、2004年11月の日朝による実務者協議では「1994年3月入院、4月死亡」と時期を変更。この実務者協議では横田さんの「遺骨」だとされるものを北朝鮮側が提供したが、日本側はDNA鑑定の結果、遺骨は別人のものだと結論づけている。
今回の「消息筋」の情報の信ぴょう性は不明だが、韓国では大手紙の朝鮮日報や、経済紙の「アジア経済」がRFAを引用する形で報じている。仮に情報が正確であれば、「遺骨」とされるものの引き渡しや再鑑定をめぐる日朝の攻防が焦点になりそうだ。