働きすぎによる過労死をなくそうと活動してきた過労死弁護団全国連絡会議主催の「過労死 110番30周年記念シンポジウム」が2018年 6月13日、東京で開かれた。
これまでの30年間を振り返るとともに、さらなる努力が必要との認識から「過労死の予防・補償をどのように進めていくか」をテーマに研究者、医師代表の講演を聞いた。
労働者の 6割が職業生活に強い悩み
過労死防止学会代表幹事でもある森岡孝二・関西大学名誉教授は、30年の活動を高く評価した。弁護士との電話相談「過労死 110番」は1988年 4月に大阪で始まったが、 6月には 7か所の全国ネットに発展、10月に連絡会議が結成された。
同年 2月に急死した48歳男性について、大阪での電話相談をきっかけに労災申請、そして1989年 5月に初めての労災認定となった。世界に「カローシ」という言葉が広がった。1991年11月には全国過労死を考える家族の会が結成された。
森岡名誉教授は日本の労働時間の長さ、過労死や過労自殺の具体例、政府の防止対策も紹介した。しかし、労働時間短縮の一方で除外協定があり、労働組合が対応して来なかったことを指摘した。大組合でなく少数の弁護団、家族の会が過労死運動の中心になりえたのはメディアの支持があったから、とも強調した。
天笠崇・代々木病院精神科科長は過労自殺に焦点をあてた。
長時間・過重労働、裁量性のなさ、ハラスメントがうつ病や自殺を招いている。労働者の 6割が職業生活に強い悩み、不安、ストレスを感じ、労働相談ではいじめ・嫌がらせ件数が増えている。
ストレスチェック制度などができたものの、総合すればメンタルヘルス対策は後退している。努力に不釣り合いな報酬、長時間労働、対人関係のストレス、過重労働、ハラスメントなどがうつ状態を進める。この点からも政府が導入を急ぐ高度プロフェッショナル制度は疑問が大きい、など。
弁護団幹事長の川人博弁護士は、発生する過労死への迅速な対応、労働時間の正確な把握法、労働間隔のインターバル制普及、を緊急な課題と指摘した。 (医療ジャーナリスト・田辺功)