國學院大職員有志が学生向けに「読書案内本」 池上彰、池井戸潤ら著名人109人が1冊ずつ推薦

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読書離れに歯止めかけようと

   学生たちのナマの声を聞いて分かったのは、学生らを読書の入り口まで導く手助けが必要だということ。なにしろ何を読んでいいのか分からないというのだ。そこで、プロジェクト第2弾として、読書案内の本をつくろうということになった。多種多様な分野の第一線で活躍している人が勧める本を紹介するのが良いのではと考えた。「読書スペース」が完成した1か月後からこんどは「私の一冊」制作がスタートした。

   約300人に寄稿を依頼。制作意図を説明し、報酬がないこともあらかじめことわった。意中の人から寄稿を得られなかった残念な例もあったが、それでもやむを得ない理由を添えての返信があり、あらためて人物を見直すとともに人選が確かだったことに安心し前向きな気持ちを新たにしたものだ。

   それぞれの推薦図書を見て、依頼の意図を受け止めてもらえたことが分かりスタッフは自信を深めたという。池上さんは、近年見直され評判になっている「君たちはどう生きるか」、池井戸さんは、戦争の愚かさや悲惨さを描いた名作とされる「卵をめぐる祖父の論争」を挙げた。「気合いだ」で知られる元プロレスラーのアニマル浜口さんは、トレードマークのフレーズとは趣を異にする「修身教授録 一日一言」。同書は昭和初めの高等師範の教師が自己の高め方、身の律し方を述べたものだ。

みちのきち「私の一冊」
みちのきち「私の一冊」

   これら109人分の原稿の編集・制作の作業にあたったのは6人。一人あたり50人を担当し連絡をとる。口をそろえて「大変以上の作業だった」という。109人に絞られてからも「大変」であることに変わりはなかった。書籍編集の経験者は皆無。デザイナーや出版社の担当者らと意見が合わず、泣きながら作業をすることもしばしばだったという。

   デザイナーとの折衝役を務めた財務部経理課主任、村越美里さんはその一人。原稿の長さや仕様はまちまちだったが、寄稿者の意向を大事にしたい村越さんらは、長いものは文字を小さくするなどして原稿のままを本にしようとしたのだが、それが、いわば出版の常識では受け入れがたかったようで「文字間隔のことなど分からないことを細かくいわれてもめたこともあった」と振り返る。結果的には「勉強になった」という。1冊の書籍で100人を超える著名執筆者がいた例はほとんどなく、本づくりのプロの側にも戸惑いがあったに違いない。

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