オタク大国ニッポン、クール・ジャパン、日本のコンテンツは世界中で人気――マスコミなどではいまだに、こうした掛け声が聞かれる。ところが大国の一角を占める「ゲーム」の世界で、ある変化が起きている。
それは、「中国」の進出の本格化だ。
巨大市場に乗り込むどころか、逆に中国発のスマートフォンゲームが、足元である国内市場に本格進出、今や「貿易赤字」状態にある。
アズレン「艦娘」にかみついた艦これ
「関連企業の皆様ならびに、『アズールレーン』のファンの皆様、『艦隊これくしょん』『戦艦少女R』のファンの皆様に多大なご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます」
2018年6月3日、公式サイトでこう声明を出したのは、中国発の人気ゲーム「アズールレーン(アズレン)」だ。17年リリース、歴史上の軍艦を擬人化したキャラクターを率い、敵と戦うゲームである。日本ゲーム「艦隊これくしょん(艦これ)」の影響を受けつつ、独自の世界観やゲーム性を打ち出している。
事の起こりは5月27日、AbemaTVで放送された関連番組「アズレンTV」で、作中のキャラクターを「艦娘」と表記していたことである。「艦これ」陣営のDMM側は直後、「艦娘」は自社の造語であり、登録商標であると声明を出す。これを受けて、「アズレン」側も謝罪に追い込まれたわけだ。
しかし「アズレン」もただでは起きない。直後、「艦娘」に代わるキャラクターの総称をツイッター上で募集する。これが1万5000以上のリツイート、リプライも5000近くに達し、うまくPRにつながった。
「艦これ」がブームを呼んで以来、そのフォロワーは枚挙にいとまがない。そんな中で「アズレン」は17年9月の日本上陸以来、登録者はすでに500万を突破、ゲームを題材にした二次創作作品も、pixiv上での閲覧数が「艦これ」をしのぐまでになった(pixiv insideより)。「艦これ」の厳しい対応は、その勢いへの警戒感が背景にある、との邪推もある。
「FGO」など中国で人気も...
「アズレン」だけではない。スマホゲームの世界では国内でも、「中国」の存在感が年々高まっている。
18年6月7日、各国のアプリ市場動向をリサーチしているモバイルインデックス(韓国)が、気になるレポートを発表した。
「中国に進出した日本のスマホゲーム」と「日本に進出した中国のスマホゲーム」の売り上げを比較したこのレポートによると、2017年、日本ゲームの中国での売り上げは307億円、対して中国ゲームは、日本で417億円という数字を弾きだしていた。日本はスマホゲームの世界で、すでに「対中貿易赤字」ということになる。
内訳を見ても、日本ゲームは「Fate/Grand Order」、そして人気漫画「NARUTO」を原作とした「火影忍者」の2作で全体の80%近くと、寡占が著しい。対して中国は、レポートで名前が挙がるだけでも、「アズレン」(76億円)を含む5作が50億以上を稼ぎ出すなど、層の厚さが目立つ。
「パクリ」問題もたびたび指摘されるが...
課題もある。いわゆる「パクリ」問題だ。
先日、ツイッターで話題になったのが、「機動少女 Gundam Girls」なる中国ゲームだ。タイトルにもあるとおり、「ガンダム」などのロボットを美少女化したキャラが多数登場するゲームである。が、ニュースサイト「ねとらぼ」の取材によれば、版権元の許諾は一切なし。結局、6月8日にサービス終了となった。
これは氷山の一角に過ぎない。一つヒット作が出れば、ストアにはたちまち怪しい「そっくりさん」があふれかえる。
とはいえ、いつまでも「中国=パクリ」とは笑っていられない。
中国・NetEaseの「荒野行動」は、先行するPC向けゲーム「PUBG」をパクった、として、訴訟の真っただ中だ。しかしそのダウンロード数は全世界で2億を超え、上記レポートによれば、日本での売り上げも17年だけで39億円、なおも成長基調にあるという。
NetEaseは、こうしたスマホゲームでの好調を背景に、「Halo」「Destiny」シリーズなどで知られる米メーカー・バンジーに1億ドル(110億円)という巨額の出資を行った。VR・ARなど、新技術にも積極的に取り組み、開発力強化に努めている。