NHKの歴史番組「歴史秘話ヒストリア」の2018年6月13日放送で、戦国大名の小田氏治(1534?~1602)が取り上げられる。
「小田氏治」――といっても、「誰?」となる人が多いだろう。「おおっ」と膝を打ったあなたは、相当な日本史通だ。実は氏治、「戦国最弱」「不死鳥」などのあだ名を持つ、戦国時代ファンの間ではちょっとした有名人である。マニア好みの人選に、SNSは放送前から盛り上がっている。
負けて負けて...でもタフに生き延びた
「連戦連敗のポンコツ・オブ・ポンコツ。なぜか憎めない『常陸の不死鳥』」――歴史作家の長谷川ヨシテルさんが2017年12月刊行した『ポンコツ武将列伝』(柏書房)では、こんなタイトルで小田氏治を紹介している。
氏治は常陸国、現在の茨城県を舞台に活動した。「おだ」違いの織田信長とは同い年である(異説あり)。小田氏は鎌倉時代から続く名門で、足利将軍家とも親戚同士という、まさに「貴公子」だ。
しかし時代は弱肉強食の戦国時代である。家を継いだ氏治は奮戦するが、北条氏、上杉氏、佐竹氏といった強大な勢力に翻弄され、最終的には大名としての地位を失ってしまう――その生涯を要約すれば、こんな感じだろうか。
光るのはその「負けっぷり」だ。事典サイト「ニコニコ大百科」では、有志が実に5000文字以上の長文でその概要をまとめているが、とにかく「戦下手」なのである。攻められては負ける、攻めても負ける。上記「大百科」の記事では「敗戦」「落城」といった文字が赤く強調されているが、その箇所なんと23に上る。
しかし「不死鳥」の異名があるとおり、氏治は粘り強く奪還を試み続ける。有能な家臣にも支えられ、なんとか成功するのだが、その城をまた奪われる。取り返してもまたまた落とされる。今度こそ、と返り咲くがやっぱり負ける――普通ならどこかで討ち死にしそうなものだが、こうした「連戦連敗」を繰り返しつつ、結局戦国の世を生き延びてしまった。