初の米朝首脳会談後に発表された合意文書では、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が「朝鮮半島の完全な非核化への断固として揺るがない決意を再確認」することが盛り込まれたが、「完全な非核化」の認識をめぐる隔たりは埋まっていないようだ。
米国がこれまで主張してきた「完全かつ検証可能で不可逆的な方式の非核化(CVID)」の文言は盛り込まれなかった。トランプ氏は合意文書発表後の2018年6月12日夕方の記者会見で「検証する」と主張したものの、具体的手法についての言及はなく、今後の協議に委ねられることになりそうだ。
「朝鮮半島の完全な非核化への断固として揺るがない決意を再確認」というが...
「朝鮮半島の完全な非核化」という表現は4月27日の南北首脳会談後の「板門店宣言」でも盛り込まれた表現。米朝首脳会談では、そこからどの程度踏み込めるかが焦点のひとつだった。
合意文書署名の際、トランプ氏は合意が「包括的」であることを強調。実際、声明では
「トランプ大統領は北朝鮮に体制保証を提供することを約束(コミット)し、金委員長は、朝鮮半島の完全な非核化への断固として揺るがない決意を再確認した」
などと具体的な段取りには触れなかった。体制保証については
「米国と北朝鮮は、朝鮮半島に持続的、安定的、平和的な政権をつくることでともに努力する」
とした上で、非核化については、
「4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けて努力することを約束する」
として板門店宣言をそのまま踏襲した。
トランプ氏「こんなに分かりやすい書きぶりはない」
記者会見では、CVIDが含まれていないことについて「妥協したのか」と指摘する記者に対して、トランプ氏は
「全然そんなことはない。これ(共同声明)を見てほしい。こんなに分かりやすい書きぶりはないと思う」
と反論。米朝関係樹立や体制保証に関する記述を読み上げたのに続いて、非核化について「朝鮮半島の『完全な』非核化」と、「完全な」を強調した。CVIDでは特にV(検証可能)が重要だとされる。
「(金)委員長と、米国や国際社会が(非核化を)検証する方法について話し合ったのか」
との問いには、トランプ氏は
「そうだ。検証する。その達成には多くの人々の協力が必要だと思う。一定の信頼を醸成した、それが今回の成果だ」
と答え、具体的内容は詰められていないことをうかがわせた。
トランプ氏は署名の際、正恩氏をホワイトハウスに招待する意向を示し、記者会見では平壌に「適切な時期に行くことになるだろう」と話した。これに加えて、合意文書ではポンペオ国務長官らによる閣僚級協議を「米朝首脳会談の結果を履行するために、可能な限り早く」行うことをうたっている。こういった機会を通じて「朝鮮半島の完全な非核化」の定義や段取りをめぐる議論が続くとみられる。