一般住宅に有料で旅行者らを泊める「民泊」のルールを定めた「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が2018年6月15日に施行されるが、すでに一部で混乱が広がっている。
民泊仲介サイト世界最大手の米エアビーアンドビー(Airbnb)は新法が施行される15日以前に受け付けた違法な民泊物件の予約を取り消し、代金を返金すると8日、発表した。新法は民泊を推進するのが目的だが、違法な「ヤミ民泊」をなくすことも求めており、これまでグレーゾーンだったヤミ民泊は正規の仲介サイトから姿を消した。
新法施行の前と後で...
「民家に宿泊すること」を意味する民泊は、訪日外国人観光客の増加とともに2015年ごろから物件が増えた。新法施行前は「簡易宿所」として旅館業法に基づく許可が必要だったが、許可を取らないヤミ民泊が多く、近隣住民との騒音トラブルなどが社会問題となった。エアビーは18年3月末まで日本国内で6万2000件の物件を紹介してきたが、この中には旅館業法の許可を得ないヤミ民泊が多数含まれていた。
新法は旅館業法の許可を取らなくても、消防設備など一定の基準をクリアすれば都道府県への届け出で個人事業者が民泊を営業できるようになり、エアビーなどの仲介業者も合法的な届け出物件しか仲介できないことになった。
エアビーは新法が施行される15日以降は、(1)旅館業法(2)民泊新法(3)国家戦略特区(旅館業法の特例)のいずれかに基づいた合法的な物件しか仲介しない方針を決めていた。しかし、新法施行前はヤミ民泊の物件を扱っており、観光庁が15日以降の宿泊については違法物件の予約を取り消すよう求めたことから、エアビーも対応せざるを得なかったということだ。
観光庁は「柔軟な対応」認めず
エアビーはキャンセルした予約者の人数などを明らかにしていないが、約11億円の基金を設け、代金を返金するほか、航空券の変更手数料なども負担する。エアビーは少なくとも数千人の予約者に影響が出るため、観光庁に柔軟な対応を求めたが聞き入れられず、今回の決定は「苦渋の判断」としている。
政府は民泊新法に基づく届け出が増え、ヤミ民泊がなくなることを狙っているが、届け出手続きの煩雑さなどから件数は伸び悩んでいる。エアビーが法施行直前までヤミ物件を仲介するなどグレーゾーンのビジネスを続けていたのも、届け出物件の少なさが故との指摘もある。ただし、民泊物件を紹介する仲介業者の中には、新法施行前からヤミ物件は紹介せず、旅館業法か国家戦略特区に則った正規の物件しか紹介しない業者もおり、最大手のエアビーは自ら混乱を招いたともいえそうだ。