本田圭佑は「必要ない」。ロシア・ワールドカップ(W杯)に臨むサッカー日本代表でスタメンに返り咲いたMF本田圭佑(31)に、元代表の秋田豊氏が落第点をつけた。
秋田氏はこれまで、本田に対して一定の評価をしてきた。パチューカ(メキシコ)での活躍などから、「100%代表に入るべき」と語ったこともあった。それがこのW杯直前に急転させた最大の理由は、何なのか。
「結果を出せないなら一歩後ろに下がるのは当たり前」
秋田氏は2018年6月9日放送の「SPORTSウォッチャー」(テレビ東京系)に出演。同日未明に行われた親善試合・日本(FIFAランク61位)対スイス(同6位)戦を振り返った。
4-2-3-1のトップ下で先発した本田だが、チャンスを生み出すことはできなかった。球離れが遅く精度も低いパスワークでは均整のとれたスイスの守備網を崩せず、何とか放ったペナルティエリア外からのミドルシュートも力がなかった。パスが集まりやすいポジションとはいえボールロストも多い。後半途中でベンチに退き、チームは0-2で敗北。5月のガーナ戦に続く2試合連続の無得点・複数失点と不安ばかりが募った。
攻撃の要を託されながら存在感を示せなかった本田に、秋田氏は失格の烙印を押した。「結果を出せないのであれば本田選手は必要ない」「決めるべきところで決められない」と斬って落とし、「1回のプレーで流れを変えることはできた。相手に脅威を与えるようなシュートは十分打てた。途中から使う可能性はあるし、そういう起用の仕方をした方がいいと思う」と、スーパーサブ的な役割を提案した。
秋田氏は11日放送の「あさチャン!」(TBS系)でもダメ出しした。スイス戦からベテラン中心にスタメン6人の入れ替えを提案し、そこに本田も含めた。理由は上記番組と同様に「決定力が落ちているから」と明快だ。
「本田選手は途中からの投入でもいいと思う。決定的なところで結果を出してきたのが本田圭佑なので、結果を出せないなら一歩後ろに下がるのは当たり前」
W杯初戦・コロンビア戦(6月19日)まで、実戦はパラグアイ戦(6月12日)のみ。土壇場も土壇場だが、「ベテラン選手たちを変えて刺激を与えないと、勝ち点1も取れない可能性が大きい」と厳しい表情で語った。
「南アW杯前に勝てなかったのとは全く違う」
成功体験としてしばしば言及されるのが10年南アフリカW杯での躍進だ。当時は直前4連敗でW杯に突入しながら、直前で岡田武史監督(当時)が決断した極端な守備重視への戦術変更が功を奏した。そしてグループリーグで2勝し、16強入りを果たす番狂わせにつながった。この時のような奇跡を起こせる可能性は今回も一部で指摘されており、本田自身もスイス戦前、「南アフリカW杯の守備のやり方、全部ダメでもあのやり方はできる」と南アの奇跡を思い出している。
しかし秋田氏の考えは違った。本田をはじめとした現メンバーの大幅変更を求めた。
「今の流れは、南アW杯前に勝てなかったのとは全く違う。何が違うかというと、当時は勝てなくても内容が変わっていた。でも今は内容が変わらない。だから思い切った決断をしないといけない」
秋田氏がここまで「本田不要論」を唱えるのは珍しい。どちらかといえば高い評価をしてきたからだ。
17年9月のロシアW杯最終予選の最終戦・サウジアラビア戦。0-1で敗戦し、4-3-3の右ウィングで先発した本田も得点を奪えずハーフタイムでベンチに退いた。だが秋田氏は、同月6日の「SPORTSウォッチャー」で、本田について「僕は100%メンバーに入った方がいいと思う」と信頼を寄せた。「先発かどうかは話が別」としながら、「ミドルシュートのパワーは誰にも負けないものを持っている」と評価した。少なくとも、「必要ない」と言い切るほどネガティブな発言はしていない。
直近でも同じだ。西野朗監督の初陣・ガーナ戦のメンバーが発表された5月18日、同番組で「本田選手は経験もあるし、ここ数年の中でも一番良い時期。選ばれて当たり前」と太鼓判を押していたのだ。
確かに本田は今季パチューカで、34試合13ゴール7アシストと好調だった。代表でも、南アW杯での2ゴール、ブラジルW杯での1ゴールと、ここぞの試合で決めてきた。バヒド・ハリルホジッチ監督体制でも、総得点数は香川真司、岡崎慎司と並んでトップの9ゴール。しかし、代表で最後に得点したのは16年9月のUAE戦。2年近くゴールから遠ざかる男に、先発を託せるだけの「決定力」の回復はもう望めない、ということだろうか。