2018年6月10日放送の情報番組「Mr.サンデー」(フジテレビ系)で、東海道新幹線「のぞみ」で発生した乗客3人の殺傷事件を取り上げた報道が、ネット上で物議を醸している。
容疑者の身柄のあった警察署前でスタジオと生中継を結んでいた、ディレクターの発言を聞いた視聴者の多くが、ある部分に「それは言うべきではない」と引っかかったようなのだ。
「警察は2つの見方をしています」
この事件は6月9日22時前、東京発新大阪行きの「のぞみ265号」の12号車で発生した。小島一朗容疑者(22)=11日に殺人容疑で送検=が、同じ車両に乗っていた会社員の男性・梅田耕太郎さん(38)の首などをなたのような刃物で切り付け、殺害した疑いがある。
10日放送の「Mr.サンデー」では、鈴木孝ディレクターが小島容疑者の身柄があった神奈川県・小田原警察署前からスタジオへ生中継で最新状況を伝えた。事件翌日で沸き立つマスコミについて「きょうは、入り口のところに多くの報道陣が詰めかけ、テレビカメラもたくさん集まりました。大変な混乱ぶりでした」と報告。「小島容疑者はこの警察署の3階の留置所の中に現在、います」とした。
鈴木氏は「ここで最新情報です」と切り出した。「新幹線の車内で被害者となってしまった梅田さんなんですが、小島容疑者にたった1人で立ち向かったということが目撃者の証言で分かりました」とした上で、「今、警察は2つの見方をしています」と報告。
「梅田さんが立ち向かったおかげで、多くの乗客が助かった、救われたという見方と、梅田さんが立ち向かって、容疑者を刺激して、結果として最悪の事態を招いてしまった。こうした2つの見方を慎重に検討しながら捜査を進めている状況です」
と最新の捜査状況を説明した。
「後半の情報いらなくないか?」
こうした鈴木氏のリポートをめぐって、ツイッターなどインターネット上では疑問の声が殺到していた。梅田さんは容疑者に立ち向かった結果、刺激して「最悪の事態」を招いてしまったかもしれない――。鈴木氏がそんな警察の1つの見方を伝えたことに、
「たとえ捜査上でそういう見解があったにせよ、それを言うべきではない。被害者感情を考えたら」
「勇敢に助けに入って亡くなられた方に対して酷い言い方と思う」
「遺族の方がそれを耳にした時どう思うよ。被害にあわれた女性2人もどう思うよ」
「可能性の低い、また遺族の方を刺激するようなことは報道すべきでないと感じた」
との声が続出。捜査線上でそんな見方が浮上するのは理解できるとしても、それを伝える必要はないのではないかというのだ。
作家の竹田恒泰さんもツイッターで、鈴木氏リポートの「2つの見方」を紹介。「後半の情報いらなくないか?被害者に対してあまりに心ない報道だ。嫌悪感しかない」と疑問を呈した。
番組では、司会のフリーアナウンサー・宮根誠司さんとゲストの板橋功・公共政策調査会研究センター長が、新幹線車両の模型をもとに犯行当時の状況を次のように振り返った。
小島容疑者は隣席の女性を切り付け、通路を挟んで向かい側の女性にも襲いかかり、それを見た最後列の梅田さんが止めに入った。女性2人はその隙に13号車へ逃げ、梅田さんは12号車の中央付近で容疑者に馬乗りになられ切られた――。
板橋氏「梅田さんは逃げることもできたわけですよね」
宮根さん「梅田さんが小島容疑者を止めに入って、この2人が助かったわけですから、大変勇敢な方ですよね」
板橋氏「身を挺した勇気ある行動だと思いますね」