米朝首脳会談に臨む北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党にとって、開催地のシンガポールは指導者にとって初の「遠出」だ。それだけに警備面が課題になるとみられるが、現地メディアの関心事のひとつが、2018年4月に板門店で行われた南北首脳会談で正恩氏を警護した「12人組」。
この12人は北朝鮮の中でもエリートだとされ、シンガポールでも警護を担当するとみられている。シンガポールでも「あの光景」は繰り返されるのか。
正恩氏が乗るのはベンツかBMWか
南北首脳会談は板門店の韓国側の施設「平和の家」で行われたが、昼食は北朝鮮側の施設でとった。正恩氏は板門店内も北朝鮮の国章が入ったベンツの防弾仕様車「S600プルマン・ガード」で移動したが、そのベンツを12人の屈強なスーツ姿の男性が取り囲んで伴走したことが話題になった。
シンガポールのストレーツ・タイムズ紙は5月7日、ラジャラトナム国際研究院(RSIS)の研究員、ショーン・ホー氏の見解として、米朝首脳会談は北朝鮮にとって警備面でも新しい環境に置かれる、などと指摘。同氏は、3月の北京訪問時に自前のベンツで移動したことなどから、
「評判、慣れ、快適性の面から、自前の車両を使いたがるだろう」
と指摘した。
一方で、この記事では、ホスト国のシンガポールが提供した車両に正恩氏が乗る可能性も指摘している。その根拠は、シンガポール政府が6月30日まで、4台の車両については、特定の交通規則の適用対象外にする政令を出した、というものだ。この4台はBMWの防弾仕様の「760Liセダン」だという。正恩氏はベンツではなくBMWに乗る可能性がある、というわけだ。
ホテルから会談会場まで「ランニング」は厳しい?
さらに、ホー氏は、この「12人組」が銃を持つ可能性も指摘している。
「米国側がトランプ大統領を守るために何の武器も持たないことは想像できないので、平等に考えると、北朝鮮もそうする(武器を持つ)だろう」
板門店での「12人組」は、少なくとも外から見てすぐに分かる形では銃は持っていなかった。シンガポールでは、さらに緊迫した雰囲気になる可能性もありそうだ。
ストレーツ・タイムズは6月7日付の別の記事で、都心のシャングリラ・ホテルと、近くのセントレジスホテルで警備が強化されていると報じている。両首脳が泊まる可能性がある。両ホテルからセントーサ島にある「カペラ・シンガポール」までの距離は9キロ弱。板門店のように、正恩氏の車を取り囲んで走るには長すぎる距離だ。