列車が遅延する要因はさまざまあるが、JR紀勢本線で起きた遅延理由をめぐってツイッターに衝撃が広がった。
わずか数時間で、鹿に3回、猪に1回、衝突したというのだ。「当たりすぎだろ」と驚きの声があがる一方で、地元民と思われるユーザーは少し違った反応をしていた。
「地元では、あーまたか」
ツイッターユーザーの「雅」さんが2018年6月6日に投稿したのは、JR東海が運行状況を発信するサイトのスクリーンショット。30分以上の遅れが発生する場合に遅延情報が掲載されるサイトだ。そこには、三重県から和歌山県にかけて紀伊半島の海岸沿いを走るJR紀勢本線における、同日21時33分現在の遅延状況がこう書かれている。
「18時46分頃、賀田駅構内で、鹿が列車に当たった影響及び、20時14分頃、阿曽駅構内で、鹿が列車に当たった影響及び、20時44分頃、三瀬谷駅~川添駅間で、猪が列車に当たった影響及び、21時04分頃、川添駅~栃原駅間で、鹿が列車に当たった影響で、上下線の一部の列車に遅れが発生しています」
約2時間半の間に、鹿、鹿、猪、鹿と計4度、動物に接触したのである。下り線、特急ワイドビュー南紀7号に遅れが出た。
ツイッター上では遅延理由をめぐって、
「鹿当たりすぎだろ」
「こんな一斉に当たっちゃうのか」
「夜にこんなに鹿や猪が出てきたらどうしようもないのでしょうね」
と騒然。雅さんの投稿は7700回以上リツイートされた(8日昼現在)。
だが一方で、地元に暮らす人々と思われるユーザーからは、
「地元では、あーまたか」
「三瀬谷駅最寄りですが正直日常茶飯事です」
「三重生まれですが、トンネルと動物が豊富な路線ですので『あーあるね』レベルです」
と、「よくある」ことだと受け止める声も少なくない。
鹿対策で「衝撃緩和装置」を導入
JR東海の広報担当者は8日、J-CASTニュースの取材に、運行状況サイトに書いている内容は「事実です」とした上で、「動物の衝突による遅延はしばしば起きます」と話した。ただ、今回のように数時間で4回当たることも多いのかと聞くと、すぐには確認できないとのことだった。担当者は「野生動物なので線路上に入ってしまうことはあり、未然に防ぐのも難しい部分があります」と頭を悩ませている。
紀勢本線では列車と野生動物、特に鹿の衝突が相次いでおり、JR東海では対策に乗り出したことがあった。2012年5月、鹿との衝突時に線路外に押しのけるクッション状の「衝撃緩和装置」を一部特急車両の先頭部分に取り付け、効果を検証した。
13年12月に同社が発表したデータによると、同装置の設置車両は非設置車両に比べ、鹿と衝突した件数のうち線路外に押しのけた件数の割合が約13ポイント高く、運転再開までに要する時間が約3分短かった。これを受けてその後、紀勢本線を含む路線の一部普通車両にも、形状を若干変えたうえで装置の設置が進められた。
担当者は取材に対し、「ハード面での対策のほか、注意を要する区間では速度を落として運転するなど、運用の面でも衝突対策を講じています」と話していた。