両親から虐待を受けたとされる船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)が2018年3月に死亡した事件では、結愛ちゃんは書き取り練習をしていたノートに「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」などと書き残していた。
両親に対して「鬼畜の所業」といった声が相次ぐ中で、一家が以前住んでいた香川県では2度にわたって児童相談所に一時保護されたにもかかわらず、結局は結愛ちゃんを救えなかった構造的問題を指摘する声も相次いだ。そんな中で、国会議員からは、子どもを保護するために親権の制限を強めるべきだとの声もあがっている。
ドイツは1万2千件、日本は67件
一家は18年1月に東京に引っ越し、香川県の児童相談所から引継ぎを受けていた品川児童相談所が結愛ちゃんの自宅を訪問したが、母親が拒否したため結愛ちゃんと会うことはできなかった。児童相談所は「重大な事案」と判断すれば警察に通報することになっているが、今回のケースでは、両親との関係構築を優先するためだとして通報していなかった。
虐待を受けた子どもを親から引き離す制度としては、期限を設けない「親権喪失」に加えて、最長2年間にわたって親権を停止する「親権停止」の制度が12年に始まった。最高裁のまとめによると、17年に決定が出た「親権喪失」の件数は28件で、「親権停止」の件数は67件だ。
これに対して、音喜多駿都議の16年1月のブログによると、同氏が視察に訪れたドイツでは「親権停止は年間1万2千件」で、英国では「平均して年間5万件以上のケースで親権停止または剥奪」されている。法制度が異なるため単純な比較はできないものの、日本ではドイツなどと比べて親権があつく保護されているのは間違いないようだ。
「本当は親権停止すべきケースのほとんどを放置」
こういったことを念頭に、子育て支援に取り組む認定NPO法人「フローレンス」の駒崎弘樹代表理事は18年6月7日、
「本当は親権停止すべきケースのほとんどを、放置してしまっているのがわが国です。ぜひ政治家の方々に党を超えて立ち上がって頂きたいです」
とツイート。細野豪志衆院議員が、
「親権制限を国会でも検討していきたいと思います。これ以上、現状を放置できない」
「すでに、子どもの貧困議員連盟で親権制限について、問題提起をしています。子どもは、親の持ち物ではない」
などと賛同し、ブログにも同様の訴えを書き込んだ。それ以外の議員からも、
「今回尊い命を落としてしまった目黒区の5歳の女の子のようなことを二度と繰り返してはならない!」(長島昭久衆院議員)
「ママパパ議連ら含め、関心ある議連を全部巻き込んで、一気に進めませんか?今の今までわかっていながら進めなかった自責の念があります」(寺田学衆院議員)
といった声が相次いだ。
ただ、親権の制限だけで今回のケースを防ぐことができるようになるわけではなく、他にも(1)児童相談所の人員増強(2)児相と警察の情報共有(3)里親や養子縁組制度の充実、といった受け皿を整備する必要性が指摘されている。