音楽評論家も苦言
原曲のMVには、グローヴァー氏が無防備な黒人男性やコーラス隊を銃殺するシーンが。その度に、「This is America(これがアメリカだ)」「Guns in my area(近所に銃がはびこっている)」といったフレーズが歌われる。
楽曲やMVの中には、実際に起きた黒人の銃殺事件などを彷彿とさせる表現がいくつもあり、アメリカ中で盛んな考察や議論が交わされた。日本でも、ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」の後藤正文さんが、自身のウェブサイトで和訳を公開し、
「衝撃受けますよね」「自分のヌルさに反吐が出る」
などと称賛の言葉を送っている。
こうした社会的なテーマを扱った原曲だっただけに、今回の「日本版」パロディ動画の内容には、多くの音楽ファンが厳しい目を向けたのだ。実際、公開翌日の6月5日には、ツイッターの流行語を表すトレンド欄にも「This is Japan」が登場したが、その反応は総じて批判的だった。
パロディ動画に苦言を呈したのは一般のユーザーだけではない。音楽ジャーナリストの柴那典(しば・とものり)さんも、現代ビジネス(ウェブ版)に6日朝に寄稿したコラムで、
「もし本気のパロディとして『This is Japan』という動画を作るならば、インスタ映えする華やかな写真を撮り笑顔で踊る若者たちの後景には、過労死や全体主義や情報の隠蔽を示唆するイメージがあってしかるべきだろう」
と指摘していた。