マツダの株価が冴えない展開となっている。2018年5月30日には約2か月ぶりに年初来安値を更新した。米トランプ政権が検討している関税引き上げ案に加え、欧州の排ガス規制への対応なども株価上昇を抑える要因となっている。
5月30日はイタリアの政局混迷をきっかけに欧州の財政不安が高まった日で、東証1部銘柄はほぼ全面安だった。なかでも、外国為替市場で円相場がやや円高・ユーロ安に振れたことで、「欧州銘柄」とも目されるマツダ株の売りがきつかった。前日安値(1389円)を当日高値(1373円)が下回って「窓を開ける」急落となり、一時1351円まで下げて年初来安値を更新する結果となった。そこには円相場だけでなく、米欧それぞれの悪材料もかかわっていた。
トランプ政権、「輸入制限検討」発表
米国についてはトランプ政権が5月23日、自動車や自動車部品について追加関税を課す輸入制限の検討に入ると発表したことが尾を引いている。「安全保障」を理由に関税を25%に引き上げるという、トランプ政権らしい随分乱暴な言いぶりだ。
しかし、TPP(環太平洋経済連携協定)や地球温暖化対策のパリ協定をあっさり離脱するなど、政権発足以来打ってきた手を見れば「単なる観測気球で済みそうにない」と思わせるのがトランプ流でもある。日本メーカーは現地生産を増やしていると言っても米国への輸出は年間計170万台規模に上り、もし輸入制限が現実となればその影響ははかり知れない。とりわけ米国に工場を持たないマツダにとって重大な危機とも言える。
欧州での排ガス規制、さらに厳しくなる可能性
欧州では排ガス規制がボディーブローのように効いている。マツダは「ユーロ6d」と呼ばれる基準(走行距離あたりの二酸化炭素排出量)が未達成であることによって欧州委員会にペナルティ(罰金)を支払う必要があり、2019年3月期に100億円を見込んでいる。欧州の環境規制は今後さらに厳しくなる可能性があり、マツダのペナルティ負担は19年3月期にとどまらず、さらに数年続くとの指摘もある。環境規制の強化は欧州だけの話ではない。米国や中国でも年を追うごとに電気自動車(EV)など一定程度のエコカー販売を義務づける方向で、こうした分野に必ずしも強くないマツダにとっては厳しい局面が待ち受ける。
マツダはトヨタ自動車と組んで米国に新工場を設け、2021年に稼働させる方針。輸出に頼り切るリスクは多少減るものの、一方で設備投資がかさむ。設備投資については環境車や自動運転車への対応など今後、増えることはあっても減ることはない。18年5月15日、トヨタ、日産自動車に次ぐ3社目となる、国内累計生産台数5000万台超えの節目を迎えたが、これに喜んでいられない状況にあることが株価に表れている。