専門性の高い知識を伝える場合、「わかりやすさ」と「正確性」、どちらを優先すべきか。インターネット上ではいま、こんな議論が盛り上がっている。
きっかけは、日本経済新聞が公開した「マイクロソフト、設計図共有サイトを8200億円で買収」という記事だ。
「ソースコードを設計図と書くの勘弁して欲しい」
米マイクロソフトは2018年6月4日(現地時間)、ソースコード共有サイトを運営する米「GitHub(ギットハブ)」の買収を発表した。
日本時間の5日未明には、日経(電子版)がいち早く冒頭の見出しで報じたのだが、これが論争を招く。
見出しの「設計図共有サイト」が不適切ではないかとして、ツイッターでは、
「日経新聞系列のITリテラシーが低すぎて見てらんない...」
「ソースコードを設計図と書くの勘弁して欲しいな。そのためにはソースコードの的を射た漢字表記が必要」
「まあコンピュータに関わりのない人には(中略)『よく分からないもの』なんだろうとは思う。ただメディアにはそれでよしとせず、現代の基礎知識として伝達することに力を割いて欲しい気もする」
といった指摘や要望が多数寄せられた。
日経、見出しを変更
一方で、
「設計図共有サイト話の裏側には、『すべての情報を正しく伝えなくてはならない』という面倒くさい人達の上から目線な態度だと思う」
「日経のgithubの件、購読者層を考えると『設計図共有サイト』は妥当なラインに思える」
と、「言い換え」に理解を示す向きも少なくない。
なお、ネット上での反応を受けてか。5日8時までに見出しは「マイクロソフト、開発者向け共有サイト買収 8200億円」と変更されている。だが、本文では
「ソフト開発者が設計図(ソースコード)を公開・共有できるサイト」
と記載されており、同日の朝刊紙面でも「ソフト設計図共有サイト マイクロソフトが買収 8200億円」と報じている。
他紙はどう報じた?
それではギットハブを記事で紹介する際、過去にはどんな説明がなされていたのか。新聞記事データベース「日経テレコン」で全国紙(朝日、読売、毎日、産経、日経)を対象に、本文に「ギットハブ」が含まれる記事を調べた。
全期間で集計すると、日経2件(当該記事は除く)、朝日5件、毎日3件がヒット。見出しを含め、「設計図」という用語は見つからなかった。
<日経>
・ソフト開発者がコードを公開・共有できるサービス
・ウェブ系開発者が集まる米国生まれのSNS
<朝日>
・プログラマーが情報共有に活用している有力なコミュニティー
・プログラマーのための情報共有サービス
・エンジニアらが公開されたデータを使って、共同でプログラム開発ができる情報共有サービス
・ネット上で情報を共有する「ギットハブ」
・世界各地のネット技術者が、技術の根幹部分を公開しながらソフトウエアをつくる際に使われる支援ソフト
<毎日>
・ソースコードと関連文書の公開・共有が可能なGitHub(ギットハブ)
・プログラムなどを共有するIT技術者向けの「GitHub(ギットハブ)」
・プログラムなどを共有するIT技術者向けの世界的SNS「GitHub(ギットハブ)」