反トランプ派も認め始めた「歴史的快挙」
ここでまた、リベラル派はトランプ氏を批判する。
イリノイ州シカゴに住むジョナサン(46)は、「やる、やらない、やる。表か裏か。いっそのこと、コインを投げて決めたらどうかと思うよ。手紙を書いたり、自分の声明を180度、覆したり。トランプがやることは、リアリティテレビ番組だ。すべて支持率を上げるため。最初から会談を中止するつもりなんて、なかったはずだ。外交もすべて自分で決め、国務省も議会も他国の意向も無視だ。北朝鮮問題にしたって、バカにされて腹を立て、おべっかを使われていい気になり、何の戦略も計画もない。トランプにとって、朝鮮半島の和平なんかどうでもいいんだ。会談をいつでも放棄できると、自分を強く見せたいだけだ」
そして、リベラル派がよく口にするトランプ批判の決まり文句を、ジョナサンは口にした。
「It's all about his ego.(すべてトランプのエゴのためだ)」
ジョナサンの友人・アイリーンは民主党支持者だが、北朝鮮問題についてのトランプ氏のこれまでの成果を評価している。
「この先はトランプが手を引いて、民族も言葉も同じ韓国と北朝鮮が、自分たちの手で和平に向けて話し合っていけばいいのに。トランプが口を出せば、アメリカにとって都合のいいように話を進めざるを得なくなるのだから」と話す。
一貫性がなく、予測不可能で、言うことがコロコロ変わる。激しく非難していたかと思えば褒めそやす。普通なら政治家としては失格かもしれない。が、これがトランプのやり方だ。うまくいけば、歴史的な快挙を遂げるかもしれない。そう思い始めた反トランプ派は少なくない。
まさに、2016年の大統領選の時と同じだ。専門家は皆、わかったようなことを言っていたが、結局、勝利したのは、トランプだったではないか。
トランプ支持者たちは今そう、ほくそ笑んでいる。
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。