孫氏が「投資家回帰」? 米携帯「統合」が意味するコト

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   ソフトバンクグループ傘下の米携帯電話4位スプリントが、同3位のTモバイルUSと2019年半ばまでをめどに合併することになった。Tモバイルの親会社、ドイツテレコムとの間で経営の主導権を巡り対立していたが、ソフトバンクが譲り、18年4月末に合意に達した。規模拡大で携帯の次世代通信規格「5G」への投資を急ぐことになるが、背景にはソフトバンクの「心変わり」があった。

   両社の契約者数の単純合計(2017年末)は約1億2600万となり、米携帯業界で首位ベライゾン・コミュニケーションズ(2017年末契約者数1億5045万)、2位AT&T(同1億4156)に肩を並べ、「3強」体制になる。

  • 孫正義氏(2013年撮影)
    孫正義氏(2013年撮影)
  • 孫正義氏(2013年撮影)

Tモバイルがスプリントを逆転

   新会社名はTモバイル。4月27日の終値を基準とすると、スプリントの企業価値は約590億米ドル(約6.4兆円)とされ、合併比率はTモバイル1株に対しスプリント9.75株。新会社の株式保有比率はドイツテレコム41.7%、ソフトバンク27.4%となり、ソフトバンクの子会社でなくなる。新会社の最高経営責任者(CEO)は、現TモバイルCEOのジョン・レジャー氏が就き、取締役14人のうちソフトバンクは孫正義・会長兼社長ら4人、ドイツテレコムは9人を送り込む。

   ソフトバンクは2013年にスプリントを約2兆円で買収。当初からTモバイル買収を視野に検討が進んだが、オバマ政権時代の米連邦通信委員会(FCC)は、3社寡占でサービスが低下するとして反対し、頓挫した。当時の順位は、スプリント3位、Tモバイルが4位だったが、その後のスプリントの業績不振で逆転されていた。

   通信規制緩和、業界再編に理解があるトランプ政権発足を受け、2017年6月に再び交渉が始まり、大筋合意と報じられるところまでいったが、最終的に両社が主導権を譲らず、10月末に協議は打ち切られた。そして今回、3度目の協議で、ようやく話がまとまった。ただ、FCCの審査を通る確証があるわけではない。日本が3社寡占で競争が減り、楽天の参入で4社体制に戻ろうとしているように、3社では競争なくなるとの指摘は根強く、認可まで楽観を戒める声もある。

   合意を後押しした最大の要因が、「5G」だ。通信速度が現在の100倍、あらゆるものがインターネットでつながる「IoT」の基盤になる規格で、2020年に実用化される見通しだ。スプリントは早速、「新会社は今後3年間で400億ドル(約4兆3000億円)を投資する」と表明した。ベライゾンとAT&Tは2018年後半から固定通信の代替として、一部地域で5Gの商用サービスを始める予定で、年間設備投資額は、Tモバイル、スプリントは単独ではそれぞれ、2強の3~4分の1にとどまっており、この面から、統合は不可避だったといえる。

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