声優・矢島晶子さんが、26年あまりにわたって務めた「クレヨンしんちゃん」野原しんのすけ役からの降板を発表し、衝撃が広がっている。
かつて視聴者だった子どもたちなら、あの独特の声を一度は真似したことがあるはずだ。「しんちゃん」と矢島さんの声は密接に結びついており、ネット上ではすでに「後任の人は大変そうだ」といったつぶやきが相次ぐ。
担当声優の「死去」「病気」でもなければ...
長寿作品となると、担当声優は何十年にもわたって同じ役を演じ続けることは少なくない。「しんちゃん」に限らず、そのイメージの強さもあって、途中交代はなかなか困難だ。
たとえば野沢雅子さんは、1986年から32年以上にわたり「ドラゴンボール」で孫悟空などを演じる。すでにその年齢は81歳。今なおバトルシーンでは「かーめーはーめー波ー!」と絶叫し続けているのだから驚きだが、多くの人にとっては、「野沢悟空」以外の悟空はなかなか考えられまい。
そのため、時には「死去」という形で、持ち役を去る人も少なくない。たとえば永井一郎さんは、40年以上にわたって演じ続けた「サザエさん」磯野波平役を、2014年に82歳に死去し、初めて「降板」となった。
ここ数年の例だけを見ても、「それいけ!アンパンマン」のドキンちゃんや「ドラゴンボール」のブルマなどを演じた鶴ひろみさん(57歳没、17年)、「ちびまる子ちゃん」のお姉ちゃん・水谷優子さん(51歳没、16年)、「忍たま乱太郎」の山田伝蔵・大塚周夫さん(85歳没・15年)など、長寿アニメのキャラが、出演者の死で交代したケースは少なくない。
「しんちゃん」では、ぶりぶりざえもん役の塩沢兼人さん(46歳没、00年)、園長先生役の納谷六朗さん(82歳没、14年)らが死去したほか、父・ひろしを演じる藤原啓治さんは病気のため2016年から実質的に役を降りている。
このように「死去」「病気」が声優交代のきっかけになりがちな長寿アニメで、矢島さんのように、いわば「余力」を残す形で降板するのは、まれなケースと言える。