ロシア・ワールドカップ(W杯)の登録メンバー発表会見で、田嶋幸三・日本サッカー協会(JFA)会長が行ったあいさつに注目が集まっている。
田嶋会長はあいさつ冒頭、W杯出場に関して関係者に謝辞を述べたが、その「順番」をめぐって憶測が出ているのだ。
「サッカーがマイナーだった時代から長きにわたり...」
W杯メンバー発表会見は2018年5月31日に都内で開かれた。田嶋会長は、「日本サッカーは6大会連続6度目のW杯に出場します」と切り出すと、次のように関係者へ謝辞を述べた。
「サッカーがマイナーだった時代から長きにわたり支えてくださったオフィシャルパートナーのキリングループをはじめ、オフィシャルサプライヤーのアディダスジャパン、サポーティングカンパニー各社の皆様方、そして全国のサッカーファミリーの皆さん、国内外のファン・サポーターの皆さん、そして選手をこれまで育ててくださった少年団から中学・高校クラブ、Jリーグ、大学といった指導者の方々、ここにいらっしゃる報道に関わるメディアの皆様方、本当に多くの方々のサポートがあって、日本サッカーはここまでくることができたと思っています。この場を借りて皆様に御礼申し上げます」
謝辞は真っ先に、協会スポンサーのキリングループとアディダスジャパンに対して述べられており、サッカーファン・サポーターは「二の次」の形。ツイッターでは、スポンサーへの忖度ではないかなどと憶測があがることになった。
「田嶋会長がキリン、アディダスへの感謝を述べた。サポーターへの感謝の前にである。これで協会が何を優先するのか、サポーターよりも企業であることがはっきり分かった」
「スポンサーを最初に名前をあげたが、(金額面で言っても)サッカーファミリーが一番じゃないのか?」
「いの一番にキリン、アディダスなどスポンサーへの感謝、でしたね。まずはこの代表混迷の中、大雨でも日産スタジアムに来てくれた64000人に向けてお礼を言うのが先だと。どこを向いてるのか、はっきりわかりましたね。あーあ」
「これ見て本当にびっくりしたんだが田嶋幸三の第一声が『KIRIN』と『adidas』の企業名を出しての感謝の言葉から始まったのに違和感を感じた そこまで忖度するのかね?」
キリンは1978年から支援を続ける
ただし、
「考えすぎですよ」
「メインスポンサーですもん。その方々のおかげでサッカーやれてるんですよ? 感謝するのは当たり前では?」
と詮索せずに受け止めるユーザーも少なくない。
キリンとアディダスは、長く協会のスポンサーをつとめていることで知られる。キリン公式サイトによれば、サッカー日本代表の支援をはじめたのは1978年。長沼健・協会専務理事(当時)が本社を訪ね、まだ日本でマイナースポーツだったサッカーに「なかなかサポートしてくれる人がいない」との話をした。これを機に、同社と協会が東京・渋谷区の近所にあった縁もあって支援することに決めたという。
アディダスジャパンが協会のオフィシャルサプライヤーとして代表ユニホームなどを提供しているのは1999年から。協会公式サイトによれば、関係自体は1960年代から続いており、2015年には総額200億円とも言われる8年間の再契約が結ばれた。この時、大仁邦彌会長(当時)は「日本サッカーが長足の進歩を遂げた陰に、アディダスジャパンの存在があったことは言うまでもありません」とコメントしている。キリンとともに長く協会を支えている企業であるのは間違いない。
「揉み手したってスポンサーのためにはならない」
一方で、その影響力はしばしば議論の対象となる。朝日新聞の11日付記事でも、代表の背番号10には「暗黙の了解がある、と言われている」とし、「『アディダス』の契約選手が担う、というものだ」と指摘した。また「09年にはアディダスがユニホームの売り上げを伸ばすために、人気選手の背番号をできるだけ変えないで欲しいと日本協会に要望を出したこともあった」としている。
08~10年に協会会長をつとめた犬飼基昭氏が、田嶋会長とスポンサーについて語っていたことがある。10年12月発行の「サッカー批評」(双葉社)49号掲載のインタビューで、
「田嶋が僕のことを『スポンサーに態度がでかくてないがしろにしている』と言ったらしいんだけど、ちょっと待てよ、と。おまえみたいに都合の悪いことに揉み手してスポンサーに頭を下げるのがいいんじゃなくて、スポンサーのためには日本の代表がいいサッカーをやって人気を上げることが一番なんだと。揉み手してペコペコしたってそんなものはちっともスポンサーのためにはならないって言ったんです」
と述べている。