専門家「ここ数年は、かなり試行錯誤をしていた」
「ファミリーやサークルなど、グループ客をメインに捉え過ぎたことが一因にあるでしょう」。シダックスが「市場環境の影響」を受けた背景について、カラオケ評論家の唯野奈津実さんは、5月31日のJ-CASTニュースの取材にそう指摘する。
シダックスがカラオケ事業に参入したのは、1993年のことだ。唯野さんいわく、
「それ以前のカラオケボックスには、非行の温床と言われるほど、うす暗いイメージが付いて回っていました。ですが、シダックスはこれを明るいものに変えようとしたのです。家族やグループで安心して来られるよう工夫をこらしたことで人気を獲得し、一時は店舗数で全国第1位となりました」
シダックスは郊外の一戸建て型店舗を中心に出店を進めていた。店内にHIPHOPやバレエ、ヨガなどの講座を開催する「シダックスカルチャークラブ」を設置し、地域コミュニティの場として機能。ファミリー層や地元の友人らで楽しめるカラオケ店として定着したのだ。
ただこの数年、同業他社が店舗数を増やしている一方で、シダックスは減少の一途をたどっていた。「自社の狙いどころを昨今の顧客ニーズと合わせるのがなかなか難しかったのではないか」。唯野さんはそう話し、シダックスが当初、カラオケ事業のずっと前から学校・企業の給食事業を展開していたことを指摘。
「シダックスさんは『食』にもこだわりたかったのでしょうが、大人数のカラオケと違い、1人カラオケであまり食事を楽しもうとはなりません」
と説明した。
さらに、「個人的には、今回の撤退に驚いていません。ここ数年は、かなり試行錯誤をしているように映りました」。自身のウェブサイトでは、
「90年代の『カラオケ・バブル』時代のような、『カラオケと言えば飲み会の二次会など大勢でお酒を飲みながらワイワイ』的なお客様をターゲットとした経営モデルを主軸に考えているカラオケ事業者は、この先は非常に厳しい」
との観測も示していた。