関東学生アメリカンフットボール連盟が日本大学アメフト部の内田正人前監督、井上奨前コーチらへ処分を下したことを受け、大塚吉兵衛・日大学長が2018年5月30日にコメントを発表した。だが、関西学院大学の選を悪質なタックルで負傷させた問題をめぐり、これまでの主張が全面的に退けられた内田・井上両氏について、直接の言及がなかった。
一方で、日大アメフト部の選手らに対しては、29日に出された声明を引き合いに「反省し、ことの責任を重く受け止め」ているとの所感を示している。
「選手たちはこれまで指導者へ依存してきた事実を反省」
大塚学長はコメントの冒頭で、悪質タックル問題の被害選手とその家族、関学アメフト部の関係者にお詫びした。
日大アメフト部に対しては29日、関東学連が会見を開いて処分を発表。内田・井上両氏は永久追放に相当する「除名」の厳罰、森琢コーチは「資格剥奪(登録の抹消)」の処分を下した。関学のQBにタックルをしたDL(以下、当該選手)とアメフト部そのものに対しては、18年度末まで「公式試合の出場資格停止(ただし条件付きで解除の余地あり)」とした。
関東学連は規律委員会を設けて調査してきた。日大や関学の関係者、問題のプレーが起きた試合の審判、会場で見ていた人など約20人にヒアリングし精査。その結果、当該選手が22日の会見で「タックルは監督・コーチの指示だった」とした内容を事実と認定し、内田・井上両氏が23日の会見で述べた「自分の指示ではない」との主張を全面的に退けた。
これを受けた大塚学長のコメントでは、
「前監督やコーチの処分、また当該選手やチームに対しては2018年シーズン終了までの『出場資格停止』という教育的な判断をいただきました」
と、内田・井上両氏の「除名」は明示しない一方で、選手・チームの「資格停止」は明示した。
さらに大塚学長は、
「本学アメリカンフットボール部選手一同の声明文にあるとおり、選手たちはこれまで指導者へ依存してきた事実を反省し、ことの責任を重く受け止めるとともに、『部の指導体制も含め生まれ変わったと皆さまに認めていただいた時には、私たちが心から愛するアメリカンフットボールを他のチームの仲間とともにプレーできる機会を、お許しいただければ』としております」
と、選手らの責任を指摘するような文言を並べた。
「本学の教学責任者として」
確かに、日大アメフト部が「選手一同」名義で29日に出した声明文では、監督・コーチ陣の指示が「チームの勝利のために必要なことと深く考えることも無く信じきっていました」などとして反省の念がつづられている。
ただ、選手らは捜査・調査を受ける際には「私たちが信じているチームメイトのように、誠実にありのまま全てをお話し」するという、当該選手への信頼を伺わせる記述がある。また関東学連は会見で、部内の体制について「内田監督の言うことは絶対であり、選手は逆らえない。ある日突然やめさせられるかもしれず、物申すことや、支持に従わないことはあり得ない」と、支配関係が構築されていたことを認定。こうした点からすれば、選手らが監督・コーチ陣に「依存」していたとする大塚学長のコメントはどこか腑に落ちない印象も受ける。
続けて大塚学長は、「本学(日大)としましては」学連の処分を真摯に受け止めることと、アメフト部には誠実な対応をとること、そして当該選手を支援することを宣言。その上で、「本学の教学責任者として」再発防止に取り組む姿勢を示し、「改革を実行」していくとの言葉でコメントは締められている。
大塚学長は25日に開いた会見で、「内田監督が全面的に悪いことになっていますが、本当のところは分からない」などと監督・コーチ陣の責任について明言を避けていた。その中で、学連が処分にあたって強く問題視した肝心の「監督・コーチ陣の指導体制」については、結局今回のコメントで直接言及することはなかった。本当に「改革は実行」されるのかどうか、一抹の不安はよぎる。