「もともと友好的な解決をめざしていました」
発売から30年以上経った98年、いったん生産中止となった時期がある。インスタントラーメン市場の拡大、大企業の参入、流通網の整備などにより、中小企業の同社の製品は「淘汰された形となりました」という。
ところが、地元住民から復活を望む声が相次いだ。要望に応えて03年以降、不定期に限定復刻を続けた。そして10年、ふたたび常時販売されるようになり、現在は全国47都道府県に卸している。近年では年間500万食を売り上げる年もあったという。
新たな名称を一般公募したのは、「消費者第一の原点に立ち、消費者のみなさんとともに商品を作り上げたいという思いから」という。ただ、名称変更にいたった理由については「大人の事情としか申し上げられない」とのことだった。
関係が取りざたされるキリンを取材すると、広報担当者は「『キリン』の商標をめぐって小笠原製粉と係争中であることは事実です」と認めた。「もともと友好的な解決をめざしていましたが折り合いがつきませんでした」という。詳細については「現在も係争中ですのでそれ以上は明かせません」と話した。
キリンは「コーヒー及びココア」や「穀物の加工品」などを指定商品として、「キリン(KIRIN)」の文字を商標登録している。登録されたのは98年。ちょうど、キリンラーメンがいったん生産中止されたのと同じ年だった。
小笠原製粉は黙っていなかった。14年7月24日、「キリン(KIRIN)」商標での指定商品の1つ「穀物の加工品」について、継続して3年以上商標権者らが使用した事実がないとして、商標法50条1項にもとづき、取り消されるべきだと特許庁に審判を請求したのだ。
商標法50条1項では「継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標(中略)の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる」と定めている。
ところが16年3月17日に出た審決で、キリンのグループ会社の商品「きのこがゆ」に「キリン」商標が使用されていた事実が認められ、小笠原製粉の請求は認められなかった。この審決の取り消しを求める訴訟も起こしたが、16年11月7日に棄却されていた。