長崎県在住者を中心に今、LINEやSNSなどを通じ、ある「怪情報」が拡散されている。
「大村在住の友人からの情報です」という書き出しから始まるこの文章、「乾燥海産物」の路上販売を装った人物が、麻酔薬を使って通行人を昏倒させ、拉致、「臓器売買」を行っている――といった趣旨のものだ。
「実際、事件発生、臓器売買してるそうです」
結論から言うと、この情報は「デマ」、チェーンメールの類である可能性が極めて高い。
念のため、あるツイッターユーザーが掲載している文章を見ておこう。原文はLINEのメッセージと見られる。
「友達から回って来ました。
大村在住の友人からの情報です(警察の顔文字)
知らない人が路上で接近して来て、乾燥海産物をすすめて来て販売しようとしながら『一回味見をして』とか『臭いを嗅いで』とか言われても、絶対絶対しないでください。
海産物ではなく(エチルエーテル)1種類の麻酔薬で、臭いを嗅いだら意識を失う。
中国から来た新しい犯罪。
周囲へ広く知らせてください。
実際、事件発生、臓器売買してるそうです。(後略)」
「大村」は、長崎県大村市のことを指すと見られる。2018年5月中旬ごろから、長崎県内を中心に拡散しているようだ。ツイッターなどでは、「恐ろしい!」「怖かよね」「県内で起こってる事にびっくりしました!RTさせていただきます」といった書き込みが殺到、あるユーザーのツイートは25日までに2万回以上リツイートされた。
「中国から来た新しい犯罪」「臓器売買」――非常に目を引く言葉が並び、「拡散しないと!」と焦ってしまう気持ちもよくわかる。
だが、J-CASTニュース編集部が25日、長崎県警に取材すると、こうした情報が流れていることは把握しているとしたものの、直接の被害については聞いていないという。
元は韓国で広まった「都市伝説」
実は、この種の噂は以前からたびたび流布されている。「乾燥海産物」「麻酔」などで検索すると、「警察署に通う方から聞きました」「先程、教育委員会から来た情報です」「知り合いから来たメール」といった形で、ほぼ同内容の情報が流れていることが確認できる。特に2017年10月末には、沖縄県などでかなり広まり、地元紙・琉球新報のウェブ版でも取り上げられた。
当時、フリーライターの篠原修司氏らも指摘しているが、そもそもこの怪情報は、韓国で生まれたものだ。
韓国メディア「MKニュース」の記事によると2010年ごろ、やはりネットやメッセンジャーアプリなどを通じて、路上販売を装い、相手を昏睡させ、金品などを奪う――という情報が広まる騒ぎが起きた。品物が魚の干物、使われる麻酔薬が「エチルエーテル」、中国で流行している、など細部まで一致している。
この韓国発の流言を翻訳し、臓器売買という話を付け加えたものが、一連の怪情報のネタ元とみてよさそうだ。今回は、さらにそこに「大村」という具体的な地名が加わったことで、拡散が加速したと見られる。