元サッカー日本代表監督の岡田武史氏が、現代表で使われる「ビッグ3」という表現に疑問を示した。
ここ最近メディアで頻繁に目にするようになった「ビッグ3」は、長年代表を支えてきた本田圭佑、香川真司、岡崎慎司の3人の総称として使われるが、3人とも代表内での地位は大きく脅かされている。
「よく我々が言う『ビッグ3』ですが、これ岡田さん...」
岡田氏は2018年5月24日、都内で開かれたスカパーJSAT社(東京都港区)のイベントに出席。実況アナウンサーの八塚(やつづか)浩氏と、開催1か月を切ったロシア・ワールドカップ(W杯)談義に花を咲かせた。
イベントでは、スカパー側が日本代表の予想スタメンをボードで提示。システムは4-2-1-3で、GK川島永嗣、DFは(左から。以下同)長友佑都・昌子源・吉田麻也・酒井宏樹、ボランチに長谷部誠・山口蛍、トップ下に香川真司、FWは乾貴士・大迫勇也・武藤嘉紀だった。
日本人で唯一W杯での監督経験がある岡田氏は、「良いんじゃない。大迫なんかは今までにないタメをつくったり、振り向いたりできる。ブンデスリーガでかなり苦労しているけど、活躍できるなら面白くなる気はしてる」と大迫をキーマンにあげた。
一方、八塚氏が「一応、本田選手はベンチスタートということで、入れるとこうなるかなという感じですが」と、本田を武藤の位置に置くプランを示した。その上で、
「本田、香川、岡崎というのは、よく我々が言う『ビッグ3』ですが、これ岡田さん...」
と言うと、岡田氏は
「なんでビッグ3なの?」
と率直に疑問を示した。
八塚氏は「いやいや、海外での経験値を踏まえて、精神的支柱にもなり得る。テクニックもしっかりしている」と話したが、岡田氏は
「え?ううん。そんなに買ってるなら、最初から(予想スタメンに)入れておけばいいのに」
と笑い、「JFLばっかり見てるから分かんねえよ。誰がどうしたとか。新聞記事くらいでしか分からないから。まあ、いいんじゃないの」と煙に巻いていた。岡田氏は現在JFLのFC今治の運営会社で代表取締役を務めている。
「まず自分達のメインがないと『それ用』はできない」
南アフリカW杯では、土壇場での大胆な戦術変更を経て日本代表をベスト16に導いた勝負師。その時1トップとして攻撃の柱になったのは、本田だった。
そんな岡田氏は、メンバーを決めるまでには「めちゃくちゃ苦しみますよ」という。背景には監督としてのこんな考え方がある。
「美学じゃないけど、日本の指導者は『チーム作り』と『采配』とがあると、チーム作りの方にすごく執着する。相手を研究し、メンバーや交代の仕方、こういう場合どうするか、とか考える『采配』で勝つのは邪道だと思ってる人がまあまあ多い。僕はあらゆることをシミュレーションしている。こいつがケガしたら、残り10分でこうなったら...。妄想みたいにずっと試合の展開を考えてる」
「上から上手いやつ23人を選べばいいんじゃなくて、シミュレーションしてずっと妄想しているわけ。そうやって決めて、大体こういうメンバーで、と考えてると妙にストンと落ち着くときがある。大体無理矢理落ち着かせてるんだけど」
ここで八塚氏が「W杯で戦うコロンビア、セネガル、ポーランド、当然スタイルが違う。それ用にメンバーを組むんですね?」と聞くと、岡田氏は
「まず自分達のメインがないと『それ用』はできない。メインがあって微修正していく。ポーランド代表にレバンドフスキがいるならマンツーマンつけて10人対10人で戦うとか、そういうことを考える。でもベースの戦い方がないことにはそれもできない」
と自身の采配術を語っていた。