日大会見「危機管理のプロ」が徹底ダメ出し 「見たことがない」...あ然とした理由

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   日本大学アメフト部の内田正人前監督、井上奨コーチの緊急会見は、リスクマネジメントや危機管理広報に詳しいプロの目にはどう映ったのか。J-CASTニュースが、危機管理コンサルタントとして30年以上活動する専門家に見解を聞いた。

   「ちょっと信じられないです」「この人たち、何も知らないんじゃないか」――。匿名を条件に取材に応じたこの専門家は、会見の模様はすべて確認していたとして、呆れたような調子で強烈なダメ出しを連発した。

  • 緊急会見での内田正人監督(18年5月23日撮影)
    緊急会見での内田正人監督(18年5月23日撮影)
  • 危機管理の専門家が問題視した謝罪シーン
    危機管理の専門家が問題視した謝罪シーン
  • 緊急会見での内田正人監督(18年5月23日撮影)
  • 危機管理の専門家が問題視した謝罪シーン

司会者ブチ切れは「自分たちの不手際」

   緊急会見は2018年5月23日夜に行われた。出席者は内田氏と井上コーチのほか、日大に所属する弁護士、司会担当として広報部職員の4人。冒頭、内田氏と井上コーチが謝罪し、その後すぐに質疑応答に入った。

   こうした流れで行われた会見について、危機管理広報のプロに聞くと、

「謝罪してすぐに質疑応答に入ったことに驚きました。まずは時系列に沿いながら、選手の主張を認める部分と反論する部分、確認が取れなかった部分の3点をはっきり具体的に説明する必要があったでしょう」

と指摘する。会見後半、質疑応答が長引いたことに司会の男性が苛立ち、会見の終了を一方的に宣言する場面があったことについては、

   「しっかりと先に具体的な説明をしていれば、あんなに質問も出なかったでしょう。あれでは質疑が長くなるのも仕方がない。言ってしまえば、自分たちの不手際がまいたタネなんですよ」

と呆れていた。司会者の態度について聞くと、「スゴかったですね。上から目線すぎるというか、もう少し言い方ってあるでしょ。あれは謝罪会見の歴史に残る司会者ですよ」ともはや笑うしかない様子だった。

弁護士は「何のためにいるのか」

   また、緊急会見を開く旨を報道各社にファクスで発表したのが、開始時間の約1時間前だったことについても、「考えられない。失礼すぎますよ」とバッサリ。さらに、会見場で報道陣に一切の資料が配られなかったことを記者が伝えると、

 
「え、本当ですか?ちょっと意味が分からないし、信じられないです。こう言ったら失礼かもしれませんが、危機管理広報についての理解や知識が全くないとしか考えられない。もう、それに尽きると思いますよ」

とあ然。この専門家によれば、謝罪の意図で行った会見の場合は、責任者の謝罪コメントや会見側の主張、事実関係などをまとめた資料を配布するのが「常識」だという(たとえば22日の日大選手の会見では、選手による「陳述書」の写しなどが報道陣に配られた)。

   質疑応答での内田氏と井上コーチの発言についても、専門家は「事実関係よりも感情を重んじているような印象だった。報道陣や世間は『事実』を知りたいでしょう。それにあの回答というのは、甘えや幼稚さを感じざるを得ませんでした」と酷評した。

   また、質疑応答の中での説明が180度変わる場面や、記者が尋ねたポイントとは違う観点から回答する場面があったことについては、

「とにかく要領を得ないというか、何を言いたいのかが分かりませんでした。具体性に欠けているし、主張がまとまっていなかった。準備不足と言わざるを得ません。よっぽど、日大の選手の方がしっかりした受け答えをしていましたよ」

と指摘。弁護士が会見に同席していたことにも触れて、「口下手な2人に代わって、あの弁護士が説明をすればよかったのでは。あれじゃあ、何のためにいるのか分かりませんよ」としていた。

専門家が「極めて異例」と驚いたのは...

   さらに専門家は、「細かい部分ですが...」としつつも、通常の謝罪会見ではありえないというポイントを挙げた。

   まず、内田氏と井上コーチが「僕」という一人称を使っていたこと。「常識的に考えたら、『私』でしょう」とのことだ。
そのほか、会見を始める際に司会の男性が名乗らなかったことについても、「これも常識では考えられない。礼儀に反します」と指摘した。

   また、会見の冒頭で、内田氏と井上コーチが順番に謝罪の言葉を述べた場面に対しても、専門家は「極めて異例。私は見たことがありません」という。その理由については、

「普通に考えて、同じことを繰り返す必要がないからです。例えばの話ですが、企業の会見で社長が謝罪した後に、部下が同じような謝罪をする場面を見たことがあるでしょうか。普通はないと思います。それだけ、ありえないということです」

と説明した。

日大はどうすればよかったのか

   このように、今回の緊急会見における問題点を事細かに指摘した上で、この専門家は、

「危機管理広報に慣れていないというレベルではなく、率直に言えば、『この人たち、何も知らないんじゃないか』と感じました」

と強烈な一言。その上で、反則を犯した日大選手が22日に開いた会見について「理想的な謝罪会見だったと思います。今後、研修の現場などでも成功例として使われるでしょう」と絶賛しつつ、次のように話していた。

「日大側はどんな会見をすればよかったのか。その答えは簡単で、ただ前日の選手会見を真似て、同じような形式でやればよかった。本当に、ただそれだけの話だと思います」
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