「できればアップに撮るようなことは避けていただきたい」――。日本大学アメリカンフットボール部の宮川泰介選手(20)の記者会見で、代理人弁護士は冒頭、報道陣にそう要望した。
テレビ局のワイドショー番組が会見の模様を生中継したことで、この言葉は視聴者の耳に伝わることに。しかし、当のワイドショー番組では宮川選手の顔をアップで放送しており、「配慮しろよ」との声がツイッターなどに相次いでいた。
こうして注目を集めることになった、代理人弁護士の言葉。新聞やテレビ、ウェブメディアはどう配慮したのか。各メディアの報道を確認すると...。
多くの新聞は「頭を下げている写真」
関西学院大の選手に危険なタックルで負傷させたとして、宮川選手は2018年5月22日に都内で記者会見を開いた。代理人弁護士は会見冒頭、宮川選手の年齢からして通常、容姿の撮影を認めることは異例だとする一方、本人と両親が「顔を出さない謝罪はない」と考えている旨を説明。多数の報道陣に「長い将来のある若者です。できればずっとアップで撮るようなことは避けていただきたい」と呼びかけた。
この呼びかけに、報道陣はどう応じたのか。翌5月23日付朝刊の新聞各紙は1面、スポーツ面、社会面などで詳報。たとえば読売新聞(東京本社14版)は1面で、宮川選手が頭を下げている写真(横から撮影)を使用し、社会面で顔の全体写真を掲載した。
朝日新聞(同14版)は1面に、うつむき気味の写真(横から撮影)を持ってきた。一方、社会面には顔の右半分が見えるような写真(同)も。毎日新聞(同14版)も1面で頭を下げている写真(横から)を使い、スポーツ面で顔の左半分が見えるような写真(斜め前から)を掲載した。
東京新聞(同12版)も1面で、顔の右半分が見えるような写真(斜め前から)を使用した。産経新聞(同15版)は1面で、真横から撮影した写真を掲載。日本経済新聞(同14版)は1面に、頭を下げている写真(斜め前から)を使用した。
こうして見ると、顔の大部分が見えるような写真を掲載した新聞は多いが、「アップ」と呼べるかは微妙なところだ。紙面で正面写真を掲載した読売も、ウェブ版の記事では、会見場全体の写真などにとどめた。
ただ、そんな新聞各紙の配慮も映像までは行き届かなかったようだ。朝日や毎日はウェブ版の記事で会見の動画を公開しており、宮川選手の顔がまさに「アップ」で映っている。
テレビで「画面いっぱいに」
一方、テレビ各局は多くが「アップ」の映像を長めに使用していた。J-CASTニュース編集部では、以下の22日夜放送の情報番組を視聴。いずれの番組でも、陳述書を読み上げ質疑応答に答える宮川選手が画面いっぱいに映っていた。
「ニュースウオッチ9」(NHK)、「NEWS23」(TBS系)、「報道ステーション」(テレビ朝日系)、「PRIME news alpha」(フジテレビ系)、「NEWS ZERO」(日本テレビ系)、「追跡LIVE!SPORTSウォッチャー」(テレビ東京系)
ウェブメディアはどうか。BuzzFeed Japanでは、宮川選手が頭を下げている写真を使用した。顔の見える写真は、1枚もない。
ハフポスト日本版では、頭を下げている写真をトップに置いた一方、顔の左半分が見える写真を記事中に掲載した。J-CASTニュースでも、頭を下げている写真を使う一方、顔の左半分が見えるような「引き」の写真も使用した。
ここまでで取り上げた媒体と比べ、一段と高い評価を受けているメディアがある。アメフト専門誌「アメリカンフットボール・マガジン」だ。ウェブ版の記事で、斜め後ろから撮影した写真、頭を下げている写真、斜め前から壇上全体を撮影した写真の3枚を掲載。ツイッターで「写真の出し方、信頼できる」「流石です」との声が相次いで寄せられている。