東京都内を走るJR山手線で電車内に防犯カメラが順次設置されることについて、乗客らのプライバシー侵害になるかがネット上で議論になっている。
「山手線カメラに賛否 『安心感ある』『人権侵害』」。きっかけは、東京新聞が2018年5月18日のウェブ版で、こんなタイトルの記事を載せたことだ。
19日からカメラ付き車両が運行
JR東日本は、車内に防犯カメラを設置した車両を山手線で19日から運行する。1両につきドアの上に計4台を置き、作動中を示すステッカーも貼る。映像は1週間保存し、その後は上書きされる。関係法令などに基づき、映像は厳正に取り扱うという。20年の東京五輪開催直前までに、山手線の50編成すべてに備える予定だ。
東京新聞の記事では、利用者の声として、「安心感があっていい」と設置を歓迎する主婦や、「満員電車に付けても死角ばかり」と疑問を呈する会社員を紹介した。さらに、日本弁護士連合会の情報問題対策委員の弁護士が「乗客はプライバシー侵害を強制」されると懸念していることも紹介した。
日弁連では今回の件に限らず、設置が進む防犯カメラについて、「監視カメラ」だとして、度々懸念を表明している。
最近では、プライバシー権保障の充実などを求める決議を17年10月6日に発表し、「管理運用や利用の仕方によっては、無数の人々の肖像権やプライバシー権を侵害する」と指摘した。しかし、設置については法規制がなく,映像の捜査利用を適正化するため、新たな立法による法規制を行うべきだと訴えている。
ネット掲示板などでは、東京新聞の記事について、特に電車内の防犯カメラ設置がプライバシー侵害になるのかを巡って、議論になっている。
「公共の場所でしょ」VS「監視社会まっしぐら」
プライバシー侵害の恐れがあるという指摘には、ネット上では異論も多い。
「電車の車内ってプライベート空間なのか?」「何か卑しい事をする人間くらいだろ困るのは」「何の人権? 公共の場所でしょ」といった声が次々に上がった。そして、「抑止効果が目的だろ。痴漢があった場合に犯人も絞れるしな」「これで痴漢冤罪がなくなればいい」として、防犯カメラの導入を積極的に求める声も強かった。
もっとも、プライバシー侵害を心配する声もあり、「監視社会まっしぐら」「車内までも監視カメラか。もはや人権なんてないな」との書き込みがあった。また、「実際問題として、これラッシュ時でも効果あるんかね?」と疑問を呈する向きも出ていた。
電車利用者らへの過去のアンケートでは、防犯カメラに理解を示す声が大半を占めている。JR東日本が2010年3月に行った調査で約1000人からの回答をまとめたところ、「痴漢の抑止効果がある」などとして、約9割が設置に賛成し、「プライバシー侵害」などの反対は約1割に留まっていた。
JR東日本の広報部は5月18日、「プライバシー侵害の声もあることは、報道を通じて承知しています。こちらとしては、お客さまにご理解してもらえるよう努力していきたいと思っています」とJ-CASTニュースの取材に答えた。
なお、電車内の防犯カメラは、埼京線では10年から、新幹線や在来線グリーン車でもすでに設置されている。JR東日本は、18年度以降、新たに製造するすべての車両に導入するとしている。